アイビールック の A to Z【L】
アイビー信者の仲間たちと会うとまず最初に見られるのが靴だ。彼らは君の履いている靴から、君のワードローブには他に何が入っているのかを想像する。
KAMAKURA SHIRTS A to Z OF THE IVY LOOK
著者/イラスト グレアム・マーシュ
L|ローファー
「喋るのをやめて、歩き出せ。その靴には “ソール(ソウル)” が付いているのだから」
アイビー信者の仲間たちと会うとまず最初に見られるのが靴だ。彼らは君の履いている靴から、君のワードローブには他に何が入っているのかを想像する。もし、彼らが良しとする靴を履いていないとなると、冷たく無関心な表情を見ることとなるのだ。せいぜい聞きたくもない「良い靴だね」を言われることになるだろう。もちろん、アイビールックと相性の良い靴の種類はいくつも存在するが、究極のアメリカンクラシックはローファーだ。
この数年の間で、私はBass Weejunのローファーをかれこれ何足持っているのかわからなくなった。プレーンバンプであろうがタッセルやビーフロールであろうが、どれも私の足を包み込み、大抵は裸足で、あたかもこの世の全てがうまくいくかのような心地の良さを与えてくれるのだ。ローファーという靴が初めてアメリカに入ってきたのは1936年、一人のブーツ職人であるジョージ・バスによって作られたリチャード・バードのための南極探検用ブーツとチャールズ・リンドバーグの大西洋単独横断飛行用ブーツがきっかけだった。バスは靴作りに関しては素人ではなく、ノルウェーの漁師や農家が履く伝統的なスリッパから靴を作り、そのノルウェーでの起源に因んで「Weejun」と名付けたのだ。
皮肉なことに、ノルウェーの靴は恐らくアメリカンインディアンのモカシンが元になっている。Weejunはすぐにアメリカンカジュアルスタイルのシンボルとなった。この靴は両手をポケットに入れたままでも履けてしまうほど履き心地が良い。見落とされがちなところだが、しっかりと伝えておきたい。ペニーローファーという名前は、一人のアイビーガールがある日ローファーのサドルにペニーを滑り込ませ、それがブームとなり生まれたのだ。当時は、公衆電話ではたったの1ペニーで利用できたのだ!
ローファーが登場する映画は挙げるときりがない。『巴里のアメリカ人』の中のジーン・ケリーはローファーを履いて、歌って踊っていた。『パリの恋人』では、フレッド・アステアがブルーのボタンダウンシャツにローファーを合わせている。『裏窓』のジェームズ・スチュアートも『ローマの休日』のグレゴリー・ペックも履いていた。『北北西に進路を取れ』のケリー・グラントは、白のボタンダウンシャツにタッセルローファーを履いてさらにレベルの高い着こなしをした。ボタンダウンシャツとローファーの組み合わせは、アメリカ人にとってのアップルパイのようなものだ。
イギリスでは2人の靴職人によって似たようなスタイルのローファーが1920年代から作り続けているという話をここでしておきたい。一人は、ロンドンのワイルドスミスという靴職人だ。彼らは、地主階級や王室がカントリーハウスでの靴として履けるスリップオンシューズを開発した。当時「ワイルドスミスローファー」と呼ばれていた靴は、レイモンド・ルイス・ワイルドスミスによってイギリス国王ジョージ5世のためにデザインされたものだったのだ。1908年創業のサクソンは、スコットランドで誕生し英国全体にローファーを広めた。 これらは、私が1960年初期に初めてアメリカンローファーとして見つけたものだった。当時、アメリカのローファーは入手が難しく、アメリカに旅行した友人が一足ロンドンへ持って帰ってくるでもしてくれない限りサクソンの国産ローファーで我慢するしかなかったのだ。サクソンは現在も小規模な展開で生産はしているがイタリア製である。
1950年半ばでは、ローファーは大陸の影響を受けてよりエレガントなイメージが浸透し、1960年代にはローカットスリップオンローファーはアメリカでカジュアルスタイルからスーツに合う靴として変化した。Gucciは馬のスナッフルビットを型どったメタル製ストラップをローファーの全面に施し、更に華麗なローファーを誕生させた。このローファーはイタリアンアクセントを持たせたコーディネートで履くのが理想ではあったが、アイビー信者からすれば大学の入学後に履くお決まりのアイテムだった。
クラシックなペニーローファーは豊富なバリエーションで存在し、どれも魅力的なものである。私がこの素晴らしく履き心地のいい、かつ格好の良い靴の虜であることは認めざるおえない事実だ。私の一番のお気に入りは、Alden Shoe Co.が作るホーウィン社のシェルコードバンを手縫で仕上げたモカシンだ。(状態は様々だが、3足持っている。)他にも、SebagoやCole-Haanのブラウンスエードローファー、そして何足かのBass Weejunローファーがお気に入りに含まれることは言うまでもない。
要するに、ローファーは見た目も良く、履けば履くこど足に馴染み快適な履き心地となっていくのだ。ボストン・ジャーナリストの巨匠でもありファッションの流行を作り出してきた故ジョージ・フレイジャーはこう言った。「その男の身だしなみを知りたければ足元を見ろ。」
Bass Weejun、 Sebago、Gucci、そしてAldenのブラックタッセルローファーのイラストは全てグレアム氏による描写です。Aldenのコードバンローファーは写真を挿入しています。
次は、M。
ブログ内イラスト ©︎ Graham Marsh
商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。