アイビールック の A to Z【H】
アイビールックにとってハットは重要だ。
KAMAKURA SHIRTS A to Z OF THE IVY LOOK
著者 / イラスト グレアム・マーシュ
“The way you wear your hat...（君がハットを被る姿、、、） アイラ・ガーシュ”
ウィン
（1937 年リリース曲 “They Can’t Take Away from Me”の歌詞より）
H ｜ハットとポケットチーフ（ポケットハンカチーフ）の重要な役割
アイビールックにとってハットは重要だ。1959 年、クラブデートとセッションレコー
ディングによる容赦ないプレッシャーからしばらく解放された頃、大物サックス奏者のソ
ニー・ロリンズ氏は、ニューヨークのウィリアムバーグ橋の上で朝の3 時にサックスを練
習している姿を見かけられている。特徴的に刈り上げられた彼の頭には、モダンジャズの
象徴とも言える標準仕様のベレーを被っていた。この“bridge-and-tunnel（ ） エリア※ ”
に全く新しい意味が付けられるかは別としてだが、彼のベレー帽はまさにそんなイメージ
で、地味なハットがクールという言葉では表しきれない程にクールな存在となったのだ。
※bridge-and-tunnel：マンハッタン郊外に住む人たちが橋やトンネルなどを通り仕事や娯楽のためにマ
ンハッタン市内へ出かけてくるエリアを指す表現であり、ウィリアムバーグ橋もそのうちの一エリアとな
る。社会的な歴史の中でそうであったように、男性が被るハットというのはその人物の社会的
な地位と役割を示すものである。なぜ誰も、チャールズ・ミンガスにそれを教えてあげな
かったのか。彼はこのガイドラインには全く無関心な男だった。その証拠に、彼がロンド
ンを訪れてからは、ロンドンのビジネスマンたちの装いを自身のファッションの本流とし
て見出したのだ。ピンストライプのスーツにボーラーハットを被り、折り畳まれた傘を持
ち、ニューヨークストリートのあのまばゆい光景を切り壊す。これが彼の音楽への姿勢だ。
その頃一方で、Five Spot やVillage Vanguard など数限りなくあるマンハッタンのクラ
ブで、セロニアス・モンクはほぼ毎晩のように、誰の手にも負えないようなハットを被っ
ていた。藁のクーリーハット、チェック柄のアイビーキャップにスナップ・ブリム・ハッ
ト。このモダンミュージックの偉才は、ハットを被らずして音楽をすることはなかった。
ハットファッションの先をいく世代は、ファッションプレートにはない彼の数々のコレク
ションに影響を受けた。レスター・ヤングはオリジナルのポークパイハットを作り、ジェ
リー・マリガンのバックル付きアイビースポーツキャップは絶対的存在だった。
“The Clan”（ ）の先導者であったフランク・シナトラが交友関係にあったジョン・※ F・
ケネディ大統領に会いにホワイトハウスを訪れたときも、彼の生涯のトレードマークであ
るシャポーを被っていた。どうやら、この時代のファッション界でハットを被らなかった
人物はジョン・F・ケネディ大統領だけのようだ。あの洒落たヒップスターのレジェンド
であるマイルス・デイヴィスには、1961 年にGQ（アメリカのスタイルマガジン）がベ
ストドレッサーに選んだ際にグリースが送られた。ハットを被っていようがなかろうが、
だ。彼らのおかげで音楽とアイビールックの関係性は神聖なものとなったのだ。
※The Clan：フランク・シナトラが率いるシナトラ軍団は、当時アメリカメディアから” The Rat Pack
（ザ・ラット・パック） と呼ばれていたが、その皮肉交じりの呼称を嫌った彼らは、自身たちのこと”
を”The Clan”や”The Summit”と呼んでいた。今の時代でハットを被ることは、ある程度の自信と行いが必要になる。もし、ハットを脱ぐ様が決まらないようであれば、そんな時は無理に被るものではない。そうは言ったが、
自分のワードローブに一つ、自身のスタイルを測るアイテムが欲しければきちんとした装
いのハットに勝るものはないだろう。
フレッド・アステアがこんなことを言っていた。「私は新しいスーツやハットを下ろした
時は、何度か壁に吊るすことでピンとした堅さをなくすようにしている。」何を言いたい
かというと、ハットは新品であろうがなかろうが、あたかもこれまでの人生を共にしてき
たように見えるべきなのである。私もいくつもコレクションを持っている。フランスで
買ったネイビーのベレーなどがあるが、もちろんいつでもお気に入りはBrooks Brothers
のレインハットだ。小麦色のコットンポプリンにネイビーと赤のリボンベルトはシンプル
に控えめのスタイルでもいい役割をしてくれるが、晴れた日のファッションでも同様だ。
これは紛れもなくアイビークラシックなアイテムなのだ。
ポケットチーフ（ポケットハンカチーフ）
今一度覚えておいてほしいことだが、ジャケットのポケットにチーフを挿すとこはコー
ディネートを仕上げるにとても重量なことである。鎌倉シャツはとにかく多くの種類のポ
ケットチーフを揃えている。無地でもクラシカルな柄でも、日常使いのしやすいコットン
からリネン、上品なシルク素材まで、とにかく様々だ。
次は、I。IVY ガールとしよう。
GM
ブログ内イラスト © Graham Marsh
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