アイビールック の A to Z【B】
私がアイビールックを仕上げる際に、何度も試行錯誤を重ね大詰めとなるアイテムは2つしかない。それは、シャツと靴である。
B|Blazers, Brogues and Bow-ties
私がアイビールックを仕上げる際に、何度も試行錯誤を重ね大詰めとなるアイテムは2つしかない。それは、シャツと靴である。もちろん私は鎌倉シャツと共にVINTAGE IVYコレクションを作っているわけだから、当然のごとく私が着るシャツはVINTAGE IVYに限る。しかし靴となれば、たくさんある。その範囲は、コードバンのロングウィングチップブローグや別名”Smooths”とも呼ばれるプレーントゥ、そしてプレーンヴァンプやビーフロールなどのすべての素材とスタイルのローファーにまで至る。Sandersの”Playboy”ハイトップ、ClarkとHuttonのデザートブーツにParaboot、サドルシューズなどもある。もしここに書き忘れているものがあれば、謝りたい。おそらく私のワードローブの奥底に隠れてしまっているのだろう。
「『青の時代』は光や色に対する問いかけではない。このように描くための内なる必需性なのである 」―パブロ・ピカソ
青という色について語られるときピカソが第一に出てくる人物であるが、ネイビーブルーブレザーの象徴的人物ではなかった。彼はこの役割を、アイビーを愛する仲間たちに任せたのだ。私は何年にも渡っていくつものネイビーブルーブレザーを集めてきた。カシミヤ100%のブレザーもお気に入りの一つであったが、残念なことにそれは虫食いにとっても三つボタンのミシュランレストラン並みのお気に入りだったようだ。私のロフトにある箱の中に残ったこのお気に入りのものは、今やもう着古したジャケットなのであろう。アメリカ産のネイビーホップサックアイビースーツ。ソウルバンドのスーツを手掛けるテイラーであった友人に、少なくとも2度は全く同じものを仕立ててもらった。それらは芸術品である。何はともあれ、ネイビーという色はブレザーの歴史の一部である。有名な言い伝えによると、ブレザーという名前は19世紀の軍艦“H.M.S.Blazer”から生まれた。この軍艦の司令官は、バラバラな装いをしていたクルー達をまとめるために全員にブルーと白の縦ストライプ模様のジャケットを着させたのだ。
人々の日常の中では、ブレザーはイギリスのクリケットクラブでよく見られるようになり、他のスポーツ競技上でも登場するようになった。クラブカラーで染められた縦ストライプ模様のジャケットだ。最後には、その後10年ほどの年月でイギリスとアメリカの大学に広まっていった。近年では、このカラフルなストライプは姿を消し、私たちに馴染みのあるクラシカルな無地のネイビーブルーブレザーの姿となったのである。イギリスでは、今でも着られているストライプジャケットはボーティングブレザーくらいであり、どこかのサークルに属していることを意味する。
今日では、ブレザーはカーキのチノパンでも拘り抜かれたブルーのLevi'sでも似合ってしまう、無くてはならない万能アイテムとして残っている。しかしながら、伝統的な前立てや紋章が描かれている金、銀、もしくはニッケルボタンが飾られたブレザーは、アイビー信者であることを見せびらかす数少ないアイテムとなった。ボタンは、ダークブラウンのホーンボタンに付け替えてもいい。あなたのお好みで。
映画や文学の著名人たちは、いつの日からか、皆同じようなネイビーブルーのブレザーを着るようになった。ロバート・レッドフォードは、1976年の映画である『All the President’s Men』の中で素晴らしい逸品を着ている。また、アメリカの小説家でありユーモア作家でもあるフラン・レボウィッツは、Levi’s 501にサビルロウのAnderson & Sheppardによるメンズブレザー、そしてべっ甲メガネを合わせる姿が瞬く間に彼女のアイコンとなった。
私は、黒の靴は持たない。黒い靴は黒でしかないのだ!黒い靴からは何の色味も作り出されない。一方で、ブラウンの靴はどんな影にだってなれる。カーキ、バフ、ラセット、セピア、アンバー、トープ、マホガニー、サドルにタバコ。どんな場面にもどんな生地にも合う影だからこそ、コードバンのロングウィングチップブローグはアイビールックを紳士的に引き立ててくれるのである。ウィングチップは、先飾り革が尖った中央部から両サイドの背面に向かって広がる鳥の羽のような形をしており、継ぎ目には複数の小さな穴を開けたデザインが施されていることからこのような名前がついた。
1967年の映画『Point Blank』に、このようなシーンがある。リー・マーヴィン演じるウォーカーがロスアンゼルス空港のネオンが光る廊下を一人で大股に進んでいる。彼は組織から奪われた93,000ドルを取り戻すミッションにあたっていたのだ。彼は平然と、しかし威嚇的な表情を浮かべていた。彼の足元には、あのFlorsheim Imperialシリーズのロングウィングチップブローグが映る。5つのハトメが付いたダービーシューズで、タンカラーのスコッチグレインレザーにグットイヤーウェルトが付いたものだ。ダービーシューズの英名である” Blucher-style(ブルーチャースタイル) ”は、ナポレオンの敵軍の一人であったプロイセン王国のゲプハルト・レベレヒト・フォン・ブリュッヘルが考案したものであり、彼の名の「ブリュッヘル」にちなんでその名が付けられた。彼の兵士たちはローカットシューズにゲートルを付けた靴を履いていたのだが、ブリュッヘルはもっといい靴が必要と考え新しいブーツを与えた。両サイドから革が甲を覆うように付けられ、ベロにはゆとりがありその上を靴紐が横断するように通っているブーツだ。ボストン・グローブに寄稿していたあの偉大な人物である故・ジョージ・フレイジャーはこう言った。「男の着こなしを見分ける方法を知っているか?足元を見ろ。
ボウタイは、夜会服としてのタキシードに合わせるのが典型であるが、昼間に付けるボウタイは学生らしさや個性を大事にしたいスタイルの幅を広げてくれる。特に、夏は良く映える。例えば、シアサッカージャケットにマドラスチェックのボウタイ、もしくはもう少しフォーマルにブロケードやプレイド地のボウタイをダークスーツに合わせるのもいい。言うまででもないが、ブレザーにチノパンやジーンズと言ったコーディネートとも相性がいい。自分で結ぶボウタイに勝るものはないが、今は結び目が出来上がっているタイプの中でも素晴らしいものが手に入る。私のドレスコードにボウタイが登場することはないのだが、とはいえ、きちんと着こなせる人が選ぶ生地との組みまわせはとてもかっこいい。もちろん、数冊の本を抱えて出かけることは忘れないでほしい。ボウタイには様々な色と柄のバリエーションがある。主な形は、バタフライとスクエアエンドだ。
グレアム氏からの重大ニュース:
私のよき友でありReal Art Pressの出版社オーナーでもあるトニー・ヌールマンド氏と、共著者にあたるジェイソン・ジュール氏と、現在新しい本の著者に取り組んでいる。タイトルは、『Black Ivy』。素晴らしい写真と貴重な情報が詰まっている一冊となる。是非とも楽しみにしていてほしい。
次は、Cから始まるカーディガン、チノパン、Converse、そしてシャツのカラースタイルについてとしよう。
GM
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