1. Home
  2. >
  3. 知識
  4. >
  5. 読む、服の知識・歴史
  6. >
  7. アイビールック の A ...

アイビールック の A to Z【N】

もしアイビールックに欠かせないものがあるとしたら、やはりネクタイだろう。

2023.08.02 読む、服の知識・歴史

KAMAKURA SHIRTS A to Z OF THE IVY LOOK
著者/イラスト グレアム・マーシュ

N |ネクタイ

“A well tied tie is the first serious step in life”-OSCAR WILDE

もしアイビールックに欠かせないものがあるとしたら、やはりネクタイだろう。たしかに商業界全体の男たちやアートの世界の男たちはネクタイを付けなくなってしまったようだが、大多数はまだそうではない。90年代に流行したドレス・ダウン・フライデー(カジュアルフライデー)の影響もあるだろう。しかし鎌倉シャツはその流行に逆らい、美しく多彩なネクタイでその名を馳せている。光沢の美しいシルクタイから、イタリアンオーダーメイド特有の良さがあるグレナディンタイ、活用幅の広いニットタイ、そして伝統的な生地と仕立てで有名な京都の西陣で作られた完璧なバランスでオールラウンドな日本製ネクタイまで、とにかく様々だ。

大体のネクタイの幅は約3 1/4インチ(約8cm)だが、それよりも幅広のものもあれば少し狭いものもある。どの幅のネクタイを選ぼうと、結んだ時のノットの大きさと襟型とのバランスは最も大事にしたいところだ。良いバランスが取れていれば結び目が大きすぎて襟が広がってしまったり無理に開くことや、小さすぎて襟に埋もれてしまうなんてこともないだろう。標準的なネクタイの長さは約132cm~147.5cmだが、背の高い人やウィンザーノットで結ぶ場合はオーダーで長いネクタイを作成することもできる。ネクタイを結んだ時にトラウザーズのウェスト位置まで剣先が届くくらいが理想だ。



上質なネクタイは全てバイアスカット、すなわち生地を斜めに横断する形で裁断され作られている。この裁断技法によりネクタイはノットを締めたときに生地が丸まることなくすとんと下に落ちるようになるのだ。ニット素材ものは別として、上質なネクタイは結び目を作るのに十分な大きさの芯地が使用されている。ネクタイの幅広い方の剣先の裏側にはバータックと呼ばれる横に短い一直線のステッチが施されており、生地の間に隙間ができないようになっている。このステッチは、周囲の生地を引っ張ることは絶対になく、一ミリも狂いのない縫いでできている。いつくか例外はあるが、最高ランクのネクタイのほとんどがヨーロッパで作られている。そして、最も上質なネクタイはイタリア製だ。

ネクタイの結び方にはいくつか種類がある。綺麗に正しく結ばれていれば、ノットの下にわずかなくぼみができるのだ。

フォアインハンドは最もシンプルな控えめで低めのノットを作れる結び方だ。これは、イギリスの馬車や乗馬で旅をしていた時代に、馬の上に乗る男たちのネクタイが風に靡かないようこの形で結び始めたことが始まりだ。

ウィンザー公爵が好んだウィンザーノットはスプレッドカラーにしか合わない。彼はスプレッドカラーの間からネクタイが突き出るような形を好んだのだ。

ハーフウィンザーノットはフォアインハンドよりも多くひねりひっくり返すことで出来上がる。



フォアインハンドは様々な結び方の中でも最も几帳面さのあるノットであり、過去50年間のアイビーの定番であるボタンダウンシャツに合わせるのが主流だ。



ポケットチーフや靴下のように選び抜かれたネクタイを付けることは男性にとって彼ら独自のスタイルを表現することであり、アイビー・ワードローブに色味と質感を加える素晴らしいアイテムなのだ。それはダーク地に紋章をあしらったクラブタイであろうと、英国軍連隊を示す色と幅のスタライプが入ったレジメンタルタイ、別名「レップタイ」であろうとだ。軽量のシルクツイルに小さな幾何学模様をプリントした平織り生地や表面に凹凸のあるシルクニットをゆるく織ったグレナディン(フレスコ織)などもある。ウールウーステッドの柄物か無地のチャリス(柔らかく軽量の織物)もある。シルクニットのナロータイも忘れてはいけない。マドラスチェックのネクタイは上出来なチェックを探そうとするとなかなか見つからないものだ。どんなネクタイであろうと、全ては自分の好み次第でいい。



ネクタイの直接的な起源は戦争中にある。30年(1618 年~1648 年)にも及ぶ戦争の間に、ルイ14世が雇ったクロアチアの兵軍が彼らの制服として首元にカラフルなネッカチーフを巻いていた。このネッカチーフがあることでジャケットの首元がしっかりと留まり、硬い襟よりも実用的な役割を果たしていた。ルイ14世はアクセサリーなどのおしゃれに敏感であることで有名であり、このネッカチーフをとても気に入っていた。おそらく古代ローマの演説者が声帯を温めるために首元に纏っていた布から派生したものと思われる。ルイ14世は王家クラヴァット連隊を作った際に、すぐに勲章として首に巻くネッカチーフを採用したのだ。後にこのネッカチーフはクラヴァットと総称され、クロアチア人という意味の”Croat”が語源と言われている。この新しいスタイルが海峡を渡りイギリスに伝わってからイギリス紳士たちが首元に布を纏わずして完璧な身だしなみと認めなくなるまるまで、そう時間はかからなかった。より華やかで装飾的であればあるほどよかった。あらゆる生地で作られたクラヴァットはとても人気を博し、100種類近くの結び目が誕生した。



今日、世界のビジネスリーダーたちがネクタイを着け続ける限り、次の世代のエグゼクティブたちもそれに倣いスーツにネクタイを締め続けるだろう。そして、これからも役員会議室での身だしなみの要となり続けるだろう。ネクタイは、アイビークラシックとしての良さだけでなく、ビジネススーツと合わせることで高級感とリッチさ、そしてわずかな厳格さをも加えてくれるのだ。



次は、O。



ブログ内イラスト ©︎ Graham Marsh

ネクタイ一覧

グレアム氏とコラボした
”VINTAGE IVY COLLECTION”を見る

”VINTAGE IVY COLLECTION”について詳しくはこちら

商品やサービスを紹介いたします記事の内容は、必ずしもそれらの効能・効果を保証するものではございません。
商品やサービスのご購入・ご利用に関して、当メディア運営者は一切の責任を負いません。