ZEN通信 <後編>
皆様と一緒に学ぶ「古典であり、最先端カルチャーの世界」
顧客の皆様、いつも鎌倉シャツをご愛顧いただきありがとうございます。
年明けから、様々なこともあり、あっという間に月日が流れていきます。
道に迷った時や、困難に遭遇してしまった時、ZENや仏教の教えが、少しでも皆様のお役に立てることを願っております。
今回は12月の<前編>に続き、ZEN通信<後編>をお届けいたします。今や世界中で一大ムーブメントとなっている「ZEN」についてのお話です。<前編>はこちらでお読みいただけます。
―禅宗はね違うんですよ。日常の暮らしが全部修行。(続き)
横田管長「仏教の場合は発展するにあたってのバリエーションがすごく多いんですね。それはお釈迦様が細かいところよりも、大枠の大切な部分を守っていきなさいというようなことを言い残されたことにも関係していると思うんですよ。
私 「臨済義玄※でしたか?今日の臨済禅を作ったと思うのですが、この宗派が現れた時の周りの反応はどうだったんでしょうか?」※今日の臨済宗の祖
横田管長「長い長い修行の果てに仏になろうとする従来の仏教徒からは大変強い反発があったように思います。禅宗はあなた自身が仏である、と言い出したわけですからね。」
私 「横田管長の『パンダはどこにいる?』※の教えの基となったものですね。」※横田管長執筆の本
横田管長「禅宗は反発や攻撃なんかも受けたと聞いていますが、臨済の教えはどうにか残っていったのです。」
私 「やはり後世に残っていくには、人々から支持を受けなくてはならないのですね。」
横田管長「それで、日本における禅宗は武家の庇護をうけて鎌倉で発展しました。」
私 「京都ではなく、禅は鎌倉で発展したんですか?」
横田管長「はい、京都では平安時代からの古い仏教が勢力を持っていたので入り込むことができなかったのです。鎌倉には仏教における規制などがなかったことも影響しています。それで、鎌倉で根付いてから、京都でさらに発展していきました。」
私 「日本に禅を伝えたのは栄西禅師※だったと思うのですが、最初から鎌倉にいらっしゃったのですか?」※日本に臨済宗を伝えた祖
横田管長「そうね、最初から鎌倉だったんですけど、栄西禅師は真言とか天台でもよく知られていて、禅だけでなくオールマイティな方だったんです。」
私 「それは全く存じ上げませんでした。」
横田管長「それで、建仁寺※を建立するのですが、最初は禅だけでなく様々な宗派が勉強できる総合大学のようなものだったのね。」※京都五山の一つ
私 「てっきり最初から禅のお寺だったと思っていました。」
横田管長「それで鎌倉にも専門的な修行道場を、ということで建長寺※が出来たのです。 鎌倉ではやはり建長寺ということになります。」※鎌倉五山の一つ
―日曜説法は一つのライブエンターテインメント。
私 「管長のいらっしゃる円覚寺も素晴らしいですよね。私もたまに伺わせていただくのですが、日曜説法では何百人もいらっしゃっていますよね。
一つのエンターテインメントとして、私なんかは音楽を聞きにいくより楽しいと思っています。鎌倉に住んでいる有り難みを感じています。」
横田管長「あれもね~、最近ではライブ配信するようになったけれども、寺務所の人達が配信を始めた時には人が来なくなるって言うわけ。」
私 「そうなんですか!?」
横田管長「あなたがおっしゃるように、音楽なんかはCD買ったらライブに行かないということではないでしょう?むしろ現場に行きたくなるものです。」
私 「私も時間がある時は円覚寺を訪れたいですし、配信よりも遥かに興味深いと思っています。」
横田管長「日本の古い教育の中には同じ場にいるとかね、同じ空気を吸うとかね、「謦咳(けいがい)に接する」という素晴らしい言葉がありますね。その人の声に直に触れるとか、姿を目の当たりにするとかね、その場にいることで伝わる、感じることがあると思います。」
私 「何百人という方が円覚寺に集まって、関西の方からもいらっしゃるというお話も聞いたことがあります。」
横田管長「やっぱり、動画じゃなくて現場に行きたくなるわけですよね。」
―仏教の十牛図とマズローの五段階欲求。
私「仏教には十牛図※というのがあると思うのですが、私の父はマズローの5段階欲求という話をよくしておりまして、その共通点を感じています。」※牧人が牛を探す様を10枚の絵にした仏教の経典
横田管長「マズローね、はい知っていますよ。アメリカの学者の理論ですよね。」
私 「はい、自己実現という意味では非常に近いと思っています。」
横田管長「そうね、十牛図もとてもいいですよ。ゼンショーグループってあるでしょ?すき家なんかを経営しているグループですね。創業者の小川健太郎さんという方をご存知ですか?
日本の国から飢えをなくしたいという大義を掲げていらっしゃってね、この方も十牛図が好きだと仰っていました。」
私 「ゼンショーグループという巨大な飲食会社も十牛図に興味を持っていらっしゃるわけですね。」
横田管長「それでね、小川健太郎さんが私に十牛図の話を会社の幹部に話してほしいということで、本社で話をしました。十牛図の最終段階である入鄽垂手(にってんすいしゅ)※ってあるでしょ。最後は街に出て人のために尽くすというそのあたりが気に入ったんじゃないでしょうかね。」※十牛図の最後十枚目の絵に記された世に尽くす自己
私 「横田管長ご自身は現在、十牛図のどの段階にいらっしゃると思っていらっしゃいますか? やはり十番目だと思いますが…」
横田管長「十牛図は、 段階的に十番目に辿りつくというより、心は常に揺れ動いているのです。ですから、十になったと思って慢心してしまったら、また最初に戻るようなことがあるんですね。そこで、自分の心を常に制御していかなければなりません。
不思議ですよね、人間の心というものは。それに禅の修行なんかをしなくてもマザー・テレサのように人々に尽くされて人類に貢献された方もたくさんいらっしゃいます。彼女だけでなくて、人々に尽くしていらっしゃる方はすでに十番目の状態にあると言えると思いますよ。」
私 「人間が成長する過程において、十番目を目指しながらも、いつでも戻ってしまうとうい心構えを持っていなければならないのですね。」
横田管長「ですから、坐禅や作務などを通じて心の修行、トレーニングをしていかなくてはならないのです。こないだもね、栗山監督と話していて一番感動してくださったのが、私の人生観なのよね。小学校の頃から坐禅を始めて、中学校くらいには自分は禅の道で生きていこうと決めた。
その中で、何が必要かってことを考えて行動してきたんです。算盤なんてのは電卓になっていくのが分かっていましたから、全くやりませんでした。」
―大切なことは手書きの物の方が心に伝わる。
私 「書くのはどうでしょうか? 横田管長は大変達筆でいらっしゃいますよね。」
横田管長「書は小さい頃からやっていましたからね。書くのは残ると思う。
WBCの時、栗山監督も選手に伝えなくてはならないことは直筆の手紙を書くとおっしゃっていたね。やはり、LINEとかそういったものじゃなくて、大切なことは手書きの物のほうが心には伝わる。選手も頑張ろうと思うんでしょうね。」
私 「確かに、手書きや書に心を動かされます。横田管長は幼い頃にご自身の人生を決められましたが、年齢によって価値観というのは変わっていくと私は思っています。5歳で見た世界と15歳で見る世界は違うはずで、それでも5歳くらいの時に決断されたというのはすごいですよね。」
横田管長「私は教育大学である筑波大学というところに行ったのですが、途中で教職免許を取ることをやめたのですよ。先生になれるという選択肢がもし残っていたら挫けた時に逃げてしまう。そう思って退路を立ったのね。
だから今日に至るまでお坊さんであること以外何の資格も持っていないのです。運転免許もありませんし、原付も運転出来ないですし、坐禅する以外の能力は何もない。
この道で生きることが出来なかったら自分はこの世の中で生きていけないと、自分の決断に賭けたんです。」
私 「すごい決断ですね、これは栗山監督だけでなく聞いた全ての人が感動する話だと思います。やり切る、決めきることの大切さが詰まっていると思います。」
横田管長「脇目も振らずに、その時に決めたものを貫いてそれがたまたま自分には禅であって、それは確かにどんな時代においても人が生きる根本の問題を扱っている。それに出会えたことが良かったんじゃないですかね。」
私 「横田管長と禅との素晴らしい出会いだと思います。
さて、まだまだお話を伺っていたいところではありますが、予定のお時間がきてしまいましたので、最後に横田管長が書かれた『パンダはどこにいる?』についてお伺いしたいと思います。」
―唯一ですよ。自分で出版したいと思った本は。
私 「パンダが動物園のパンダを見に行く、というところからスタートしているお話で、列に並んでいたら「あなたはパンダなんだからパンダを見る必要はないですよ!」と言われ、パンダを見ることを諦め、ガッカリしたパンダが諦めずに様々な修行をして、パンダになることを目指した。
無我夢中の修行の中で、水溜りに映った自分の姿を見て、ハッと自分がパンダであることに気付いた、そして幸せになり、皆もパンダを見て癒されたというお話ですが、
最初からパンダであることに気付いていたら修行や努力は必要ないのでしょうか?」
横田管長「パンダの本はおかげさまでなかなか評判が良くてね、唯一ですよ。自分で出版したいと思った本は。あとは全部、頼まれて書いたのがほとんど※でね。」
※横田管長は多数の本を出版している
私 「そうだったのですね!それは存じませんでした。」
横田管長「自分で絵コンテも書いてね、出版社に持ち込んだんですよ。有難いことに増刷にもなってね、良かったです。
パンダは最初の入門本としてはとても読みやすくなっていると思います。
あなたも本来仏の心を持った仏と同じ存在なんですよっていうことを伝えたいと思いました。」
私 「はい、そのことがとてもわかりやすく書いてあると思います。」
横田管長「本来、自分が素晴らしい存在なんですよってことに自分ではなかなか気付けないのね。 ただ、自分は最初から素晴らしいと決めてしまって何もしないっていうのもまた違うわけなんですよ。やっぱり努力、修行のようなことをして揺るぎないものになるわけです。」
私 「やはり努力あっての、自分の素晴らしさに気付くことが重要なんですね。」
横田管長「そうね、ゴロゴロして何もしない人には努力しましょうと言う必要があるのよね。ただ、自分自身を認められないで苦しんでいるような人には、そのままで十分素晴らしい存在なんですよ。と言うのはとても良いことだと思う。
努力は必要だけど、そればかりに囚われて人を苦しめるようなことがあってはいけませんね。」
私 「自分自身の素晴らしさに気付くことの大切さ、努力しない人や苦しんでいる人にも役に立つ素晴らしい教えですね。私自身もさらに勉強を続け、今後も社員やお客様にもZENの素晴らしい教えを共有させていただければと思っています。
本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございました。」
横田管長「ありがとうございました。」
今回も最後までお読みくださり、ありがとうございました。
また、次回もこの「読む鎌」でお会いすることを心より楽しみにしています。
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