「禅」についてのお話
今回は 海外の方達からも注目される「禅」についてのお話をさせていただきたいと思います。
皆様、いかがお過ごしでしょうか?
ここ鎌倉では、海や街に海外からの観光客が本格的に戻り始めており、大変な賑わいを見せている今日この頃です。
さて、今回はそんな海外の方達からも注目される「禅」についてのお話をさせていただきたいと思います。
禅は仏教の宗派の一つで、現在禅宗と呼ばれているのは「臨済宗」「曹洞宗」「黄檗宗」が主となっております。
日本では無宗教の方が多いと思いますが、現在世界の80%以上の人々がなんらかの宗教を信仰している事実に目を向けなくてはなりません。
また、「宗教」という言葉を聞くと洗脳などネガティブなイメージを持たれる方もいらっしゃるかもしれませんが、禅や仏教には教祖と拝むような人はおらず、人々は「我々と同じ人間であるお釈迦様が悟りを開くことが出来た」という「現象」に向かって信仰しているのです。
つまり、そこには洗脳など一切なく、座禅などを通して「己に向き合う」というのが主たるその信仰の目的となります。
テクノロジーがどんなに進んでも、人間は、眼(視覚)・耳(聴覚)・鼻(嗅覚)・舌(味覚)・身(触覚)・意(意識)の5つの感覚と意識によって、物事や起こる現象について感じ認識していることに変化はありません。
六根清浄(ろっこんしょうじょう)と言ったりしますが、人間が人間生活を送る上で極めて重要であり普遍的な事象なのだと思います。
よく巷では、「偉人たちの言葉」というような本を見ることがありますが、彼らが言っているほとんど全ての言葉は、仏教2,500年の歴史の中ですでに考えられてきたものがほとんどです。どんなに1人の人間が優れていたとしても、数十年の中で得た経験や言葉には限界があることが分かります。
さて、改めて「禅」ですが、鎌倉シャツの創業者や、その他多くの日本の経営者にも多大なる影響を与えてきたのはもちろん、海外でも大きな脚光を浴びています。
特に欧米のハイソサエティの中で、「禅」は「ZEN」として翻訳され大変なブームとなっています。
その流れもあって、海外において日本食や日本酒が神格化している部分は大きくあり、さらに「ZEN」は「マインドフルネス」に変換され、同時にそれらは海外における健康ブームにもマッチしていると考えられています。
インドから中国に渡り、日本で独自に進化した「禅」はその黎明期において、ここ鎌倉で鎌倉時代に武家の庇護を受けながら大きく飛躍することが出来ました。
鎌倉の建長寺、円覚寺という大本山は、現在世界で浸透している「禅の発祥地」として広く知れ渡っています。
京都には鎌倉よりも大きく素晴らしい禅寺が多くありますが、発祥と進化においては「鎌倉」が欠かすことのできない地であったことに間違いありません。
私も仕事(作務衣の営業)で京都のお寺を訪問させていただくことが多いのですが、とても好意的に鎌倉から来た鎌倉シャツを応援してくださっています。
もちろん、鎌倉シャツの背景には、いつも大変お世話になっている鎌倉のお寺の方々がいらっしゃることがその最たる理由であるものの、禅宗において鎌倉と京都の良い関係が構築されているようにも感じられます。
そして、禅といえば欠かすことが出来ないのが「作務衣」です。
作務衣の歴史は浅いものの、禅宗の僧侶の方々が「作務」(主に掃除、洗濯、料理、薪割りなど)をするために考案され、和服をルーツに持ちながら動きやすさや耐久性などが考えられている機能的な服です。
現在の洋服の多くは、軍服やワークウェアがそのルーツとなっていることから、今後は作務衣(和のワークウェア)を起源とした新しい服が生まれてきてもおかしくはありません。
鎌倉シャツでは、作務衣に大きな可能性を感じており、また現代社会に生き、普段洋服を着ている私達が和の文化に触れるきっかけになればと考えております。
私自身、日本人でありながら洋服を着て海外を飛び回る日々を過ごしてきましたので、和の文化に触れる機会がほとんどありませんでした。
お茶、弓道や坐禅などを始めるにはハードルが高いのも事実ですが、まず作務衣を着てみると、不思議なことに和の文化に興味が湧いてくるのです。
作務衣は、「着用するだけで新しい世界が広がっていく手軽さ」から、現代社会と日本人が古来持っている素晴らしい和の文化との「接点」になると思っています。
私は作務衣を着用したことにより、禅に興味が湧き、日本人が本来持っている美意識や感性の素晴らしさに目を向けることが出来たのです。
今世界は、個人個人の主義主張や(キャンセル・カルチャーに代表されるような)排他的な行動が横行し「人間が、不完全な存在であり続ける人間に対して、完璧や完全を求める生きにくい時代」に突入したと言えると思います。
禅では他人に完璧を求めるようなことはなく、「自分自身の素晴らしさについて発見することの尊さ」について教えを説いています。
現在、世界を代表する宗教家である鎌倉・円覚寺の横田南嶺老師が書かれた「パンダはどこにいる?」という絵本は、素晴らしい自己を発見する過程が分かりやすく、可愛らしく表現されています。
「動物園のパンダを見るために列に並んでいたパンダ」という設定から始まる物語はシンプルながらとても深く、素晴らしい自己への発見のヒントになるのは間違いありません。
テクノロジーの台頭により、世の中がマスから個人に、そして無人へと向かっていく混沌とした中で、「自己へと向かう」禅の教えは、世の中を救う力があると思います。
「鎌倉シャツは、鎌倉で生まれ鎌倉が私たちを育ててくださいました。」
― 鎌倉シャツ創業者・貞末タミ子の言葉
鎌倉シャツには(シャツを売るだけでなく)創業の地であり、禅の発祥地ともいえるこの鎌倉からその素晴らしさをお伝えする使命があります。
それが、創業の地・鎌倉への恩返しになると思っています。
鎌倉シャツは、幸いにも作務衣という服を通して、日本や世界を代表するたくさんの素晴らしい僧侶の方々にお会いすることが出来ました。
鎌倉シャツも禅の世界においては、まだまだ初心者ではありますが、皆様と一緒に学びながら、その素晴らしさを多くの方々に伝えていければと考えております。
それでは、禅の教えを皆様と共有しながら、今回の結びとさせていただきたいと思います。
鎌倉シャツのボタニカル・ダイというプロジェクトは、基本的には役目を終えて散った花などから色素を抽出して、製品作りをしていきます。
そんな植物からの教えです。
「自然界の植物は、時がくれば花を咲かせ、身を実らせ、自らを完成させる
そして、その美しい花は他人のためでなく、自分の生を生かし切るために咲くのだ」
(人間は自己を完成させることがないままその生を終え、他人によく思われようと花を咲かそうとしてはいないか? 花は他人ではなく自らのために咲いた結果、多くの方を感動させている)
今回も最後までご覧くださり、ありがとうございました。
また、次回お会いすることを心より楽しみにしています。
2023年11月7日、鎌倉シャツは創業30周年を迎えます。
これからも鎌倉シャツをどうぞよろしくお願い申し上げます。
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