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ZEN通信 <前編>

皆様と一緒に学ぶ「古典であり、最先端カルチャーの世界」

2024.01.29 貞末哲兵コラム


顧客の皆様、いつも鎌倉シャツをご愛顧いただきありがとうございます。

昨年12月、鎌倉シャツの幹部社員は鎌倉・円覚寺において、横田南嶺管長より研修と座禅会を開催していただく機会に恵まれ、大変ためになるお話と坐禅の心得を伝授していただきました。


今回のコラムでは、今や世界中で一大ムーブメントとなっている「ZEN」についてお話させていただきたいと思います。

鎌倉シャツは、素材や縫製において本物にこだわり続ける会社で、逆に言えば「本物」以外には興味がないとも言えます。今回の番外編でZENについてお話させていただきたいと思ったきっかけは、鎌倉シャツの創業の地である鎌倉が「ZENの聖地」であることに他なりません。


また、禅ではなく「ZEN」とさせていただいたのは、現在欧米では宗教というよりカルチャーとして受け入れられている部分が大きく、肩肘張らず、気軽にその素晴らしい考え方に触れ、皆様と一緒に学んでいきたいと考えたからです。

ZENには絶対的な教祖がいたり、経典があったりするわけでもなく、また、何かを信じれば救われるというようなものでもなく、むしろ、そういったことを否定するそうです。
坐禅※や作務などを通して己に向き合い、自己実現をしていく過程において「無を目指す」「自らの素晴らしさを発見する」教えであったりします。
※禅宗の僧侶が掃除、料理、薪割り、畑仕事などをすること(作務衣はその時の衣服の意味)

現代社会の難しい時代背景もあって、何かを盲目的に信仰するわけではないZENの教えは現在、世界中に大きな広がりを見せております。
歴史的には19世紀の終わり頃、鎌倉・円覚寺の管長だった釈宗演のシカゴ万博の公演に始まり、仏教学者であった鈴木大拙や南禅寺の管長だった柴山全慶などがアメリカに伝えたことに続きます。

禅が「ZEN」としてアメリカに広まり、今日では「マインドフルネス」として独自に進化し、「GAFAM ※」(現在はMATANA?)などでは、瞑想などを取り入れる動きが顕著になってきているそうです。※Googleやアップルなどのテック企業


また、アップル・コンピューターのスティーブ・ジョブズがインド旅行中に仏教と出会い、ZENを崇拝することになった話はあまりにも有名ですね。

「フォーカス」と「シンプル」というZENの考え方をiPhoneやMAC BOOKなどのデザインに取り入れたことでその考えはさらに広がり、大きなムーブメントになりました。
今日では、前述したアメリカの大手テック企業の多くに巨大な「瞑想ルーム」がいくつも完備されていることは、世界中で広く知れ渡っている事実です。


今、地球は、温暖化や年々悪化する自然災害、終わることのない紛争やテロ、変異を続けるウイルス、そして、インターネットが出現したことによって加速した多様化する主義主張が蔓延する難しい時代を迎えています。
そんな困窮を極めた時代に、ZENの考え方やフィロソフィーが多くの方の生きるヒントになるのは間違いありません。


ここ鎌倉には、建長寺円覚寺という臨済禅の大本山があり、鎌倉シャツは、現在世界を代表する宗教家でいらっしゃる 円覚寺・横田南嶺管長のインタビュー をする幸運に恵まれました。

今回のコラムでは、その模様を皆様にお伝えしたいと思いますので、是非最後までご覧いただけたらと思います。

―3月6日は「鎌倉作務衣」の日。


私   「横田管長、本日はお忙しい中お時間いただきありがとうございます。」

横田管長「こちらこそ、宜しくお願いします。」

私   「まず、弊社メーカーズシャツ鎌倉ですが、鎌倉で創業して今年で無事に30周年を迎えることが出来ました。素晴らしい日本製のシャツや鎌倉の名を世界に広めていきたいと頑張って参りましたが、3年前の2020年にコロナがあった頃、当時の成長戦略における軸であった世界戦略が取れなくなってしまいました。
どこにも行かれなくなってしまったというのもあって「一度鎌倉へ退却して、再起しよう」という過程の中で朝比奈住職※にお会いすることが出来ました。」※鎌倉・浄智寺の住職

横田管長「なるほどね、前も※そのようにおっしゃっていたね。」※筆者は横田管長に何度かお会いしてお話させていただいている

私   「はい、その中で朝比奈住職より、鎌倉の会社で鎌倉という社名を使って商売をしているのだから、鎌倉のためにもう少し仕事をするべきではないか。というお話をいただきました。」

横田管長「それで、作務衣をね。(作務衣のカタログをご覧になりながら)これは仲田君※か?」※鎌倉・明王院の住職

私   「はい、仲田住職にも大変お世話になっております。今ご覧いただいている作務衣のカタログにも出ているのですが、今年から3(さ)月6(む)日を「鎌倉作務衣」の日というものに記念日申請しまして、一般社団法人である日本記念日協会から認定式も行っていただきました。

横田管長「それでは、Wikipediaで3月6日を調べたら出てくるのかな?笑」

私   「はい、日本記念日協会のサイトには記載されています。」

横田管長「先日ね、あの野球のWBCで活躍された栗山監督と対談したんです。」

私   「横田管長は、本当に色々なすごい方達と対談されていますよね。」

横田管長「そうなのよ。私は野球のことは一切わからないから最初はお断りしたんですね。 ところが、栗山監督が私の本やYouTubeをご覧になってどうしてもということで引き受けることにしたんですね。」

私   「他にも横田管長にお会いしてみたいという方は多いように思います。ソフトバンクの社長であり、花園大学ご出身の宮川さんと対談のYouTubeも拝見しました。」

横田管長「宮川さんね、お忙しい方だからね。なかなか会うことはないんですが、今度、作務衣を贈答用に考えてみますよ。」

―起きて半畳、寝て一畳…は禅の修行僧のお話。


私   「ありがとうございます。おかげさまで弊社の作務衣は鎌倉のお寺の方はもちろん、全国の方や、一般の方にもたくさん買っていただけるようになりました。
そして、今後どうするべきかと考えた時に、作務衣を、禅や日本の文化の素晴らしさを多くの方に伝えるための一助に育てていきたいと考えるようになりました。
私は鎌倉で生まれ育ったのですが、お寺のことや禅のことをあまり知らずに生きてきました。どちらかというと、アップルの製品のファンで、スティーブ・ジョブズが禅を崇拝していた、みたいなことや、ファッション的にZENについて興味はあったのですが、その素晴らしさを勉強するまでには至っていなかったのが正直なところです。私自身、お寺の方達にお会いしながら、禅や仏教について勉強させていただく機会に恵まれました。
横田管長がどこかで、私は畳一畳で生きていける。というようなことをおっしゃっていて、大変感銘を受けました。」

横田管長「それはね、禅の修行僧の話なんですよ。起きて半畳、寝て一畳と言ったりしますね。畳一畳のスペースで修行を行いますのでね。」

私   「素晴らしいですよね。」

横田管長「栗山監督も驚いていたね、このような話をすると。実際に修行をしている場所にもご案内させていただいたものですからね。
ここで寝てここでやっているんですか、と。自分にはとても無理だな~とおっしゃっておられましたよ。」

―精進料理は意外にも新しい考え方なのです。


私   「栗山監督も感動されていましたか!私も禅に興味を持ち勉強するようになり、なんとなくというか野菜中心の生活になりました。」

横田管長「精進料理はね、難しい問題でもあるんです。意外にあれはお釈迦様の頃からの話じゃないのね。お釈迦様が亡くなってから何百年か経ってから現れた新しい考え方なのです。
植物と動物とでなにか生き物として違いはあるの?」

私   「そこはないと思っているのですが、体調が良くなった気がしています。」

横田管長「そうなのよね、差別や区別をしないという考え方が根底にあって、いただいたものをお坊さんはいただきますからね。今でも南方のほうのお坊さんは何でも食べるんですよね、タイ、ビルマ、スリランカとかのね。それが後になって生臭という考え方が出てきたんですが、本来ではありません。インド※1はカーストの国でしたからね、今でも残っているくらいです。
お釈迦様はカーストの上の方(王子)の人でしたが、人は生まれによって差別されるものではない平等であると説いたのが根本なわけです。ところが、差別思想は根強くてですね、お釈迦様が亡くなって5~600年経ってから仏教に差別する概念が生まれてしまいました。
日本でも昔はそうでしたが、屠殺業はインドにおいて差別されるんですよね。動物を殺して屠殺をするというのは卑しい、虐げられた者の所業で、そういう人間が触れた物を食べると汚れがうつるという考え方が出てきました。
長い年月が過ぎる中、お釈迦様が一番嫌った差別思想が出てきてしまって、そういうお経※2を大乗仏教が作り出して、チベットや中国、北の方に伝わりました。彼らは肉や魚を食べないということを言い出しました。肉や魚を食べないと立派そうですからね。」※1仏教はインド発 ※2現在の日本は主に大乗仏教を基にしている

私   「確かに肉や魚を食べないというと立派そうで、スピリチュアルな雰囲気です。」

横田管長「この円覚寺に明治の時代、釈宗演老師という立派な方がいました。
日本は大乗仏教の国だから、お坊さんは肉、魚を食べないと見られていましたが、釈宗演はスリランカに行って修行しましたので、仏教のルーツからいくとそれはおかしいということを見抜いていたんですよ。
そして、彼はなんでもいただいて、「牛食い宗演」というあだ名がついたほどでした。」

私   「アメリカにZENを伝えたとされる高名な釈宗演にその様なあだ名があったのは存じ上げませんでした。」

横田管長「やっぱり私もね、寺の外で食事をいただくときは、お肉もいただいています。人間は長い歴史の進化の過程で生き物としては雑食ですからね。
お寺にいるとお肉はいただきませんが、いただいた時には区別をせずにありがたく頂戴しています。お寺で肉を食べないのはね、お釈迦様の決まりで、自分達で殺してはいけないということになっているんです。
また、この作務衣の作務ということに関わるんですが、お釈迦様の頃は寺では禁止していたのです。」

私   「作務は元々存在していなかったのですね。」

横田管長「はい。畑を耕したり、料理したり、いわゆる労働は、禅宗では行いますが、南方のお坊さんは今でもやることはありません。彼らはひたすらお経を読んだり、瞑想したり、そういった修行以外のことは一切やらないんですね。
大乗仏教は北の方で発展していきましたが、その中※でも禅宗っていうのが出てきてね。禅宗は7、8世紀に出てきましたね、これは仏教の正当な宗派から見ればアウトサイダーだったんです。正統派ではなかった、異端ですよ。その異端の集団がね、だんだんと膨れ上がってきて何百人の集団生活をするようになった。
お釈迦様の時代は托鉢といって、食べ物をもらう行為をしていたんですが、山の中で数百人もいると日々そんなにたくさんいただくのは不可能なわけです。そこで、自給自足の暮らしを始めたわけです。お釈迦様は、土を耕してはいけない、樹木を伐採するようなことをしてはいけないという戒律があったんですが、作務をするようになったわけです。」※円覚寺、建長寺は禅宗の本山

―禅宗はね違うんですよ。日常の暮らしが全部修行。


私   「禅宗から作務が生まれ、近代になって作務衣が生まれたわけですね。」

横田管長「仏教の修行は仏になることを求めます。仏の心というものは努力して作るものではなく、元々備わっているものであなたも私も本来持っているのであると説くのです。」

私   「なるほど、そこに禅宗の新しい考え方が生まれたわけですね。」

横田管長「そう。日常の掃除や、料理、働くこと。それは仏の修行である、と言い出したわけです。それで作務という労働に大きな意味を見出し、働くことも全部修行であると。」

私   「禅宗が生まれたのが7世紀くらいですか?」

横田管長「はい、禅宗がそのように考え始めたのです。そして、禅宗ではこの労働、作務を極めて重視するということになったわけです。」

私   「これまでなかった作務を重要視するようになったのは興味深いです。」

横田管長「先日もね、ある宗派の人が修行に来たことがありましてね。座学がないんですね!と大変驚いていました。」

私   「そういうものなのですね!」

横田管長「じゃあ、禅宗の我々が何をやっているかというと、畑を一生懸命耕してね、木を切って、薪割りとかそんなことばかりするんですよ。
今でも天台宗や、真言宗などの宗派の人はそのような作務はやらずに、そういったことは他の人やまかないの人達がやるのです。」

私   「修行の概念が宗派によってかなり違うんですね!」

横田管長「そう、彼らは懸命にお経の稽古をしたり、瞑想をしたりします。でも、禅宗は違うんですよ。特別なことはなく、日常のありのままの暮らしが全部修行となる。」

私   「日常の延長に修行があるから、おそらく一般の方々がZENに興味を抱くようになったんでしょうね。」

横田管長「日本はね、禅宗の影響が大きいですから、お坊さんはよく働いているイメージがあるんですが、南方のお坊さんはそのような労働はしません。」

私   「良し悪しではなく、宗派や考え方の違いということですね。」

横田管長「お釈迦様の教えからだんだん進化していったんだね、発展していった。 これが仏教の大きな特徴でもあるわけです。」

私   「キリスト教でも、カトリック、プロテスタントなど多少の変化はありますよね。」

横田管長「仏教の場合は発展するにあたってのバリエーションがすごく多いんですね。それはお釈迦様が細かいところよりも、大枠の大切な部分を守っていきなさいというようなことを言い残されたことにも関係していると思うんですよ。

私   「臨済義玄※でしたか?今日の臨済禅を作ったと思うのですが、この宗派が現れた時の周りの反応はどうだったんでしょうか?」※今日の臨済宗の祖

横田管長「長い長い修行の果てに仏になろうとする従来の仏教徒からは大変強い反発があったように思います。禅宗はあなた自身が仏である、と言い出したわけですからね。」

私   「横田管長の『パンダはどこにいる?』※の教えの基となったものですね。」※横田管長執筆の本


<後編>へ続く…

番外編・ZEN通信 <後編>は、1月下旬に公開予定です。

円覚寺「横田管長のページ」はこちら

鎌倉シャツの「作務衣」はこちら

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