鎌倉シャツもう1人の創業者との対話 Vol.3
鎌倉シャツ副社長でディレクターの貞末哲兵が、創業者である母・貞末タミ子について語ります。
最近毎週アップしているブログを印刷して、創業者である貞末良雄に持っていくことが習慣になっている。
先日、「鎌倉シャツもう1人の創業者との対話Vol.1とVol.2」についてお褒めの言葉をいただいた。
創業者 「よく書けているな。 なかなかこういう文章は書けるものではないし、もう1人の創業者への深いリスペクトが感じられる。」
もちろん褒められて嬉しくないこともないのだが、会社における私の役割（創業者の精神を残す）なので、その任務を遂行したいとだけ思っている。
さて、前回のVol.2に続いて本題に入ろう。
もう1人の創業者である貞末タミコが初めて訪れた、メンズのプレタ・ポルテの世界最大の見本市である「PITTI UOMO」で衝撃的な出会いがあった。
何を隠そう、鎌倉シャツにとって今では最も大切な取引先の１つとなったネクタイメーカーであるBREUER社を最初に見つけたのは彼女だった。また、後年気づくのだが、偶然にもBREUER社の本拠地がある南フランス・ニースは鎌倉と姉妹都市であることも大きな驚きであった。
https://shop.shirt.co.jp/shop/pages/breuer22ss.aspx
彼女は偶然に、何となく訪れたPITTI UOMOのブースでたまたまBREUER一族に声をかけられたのだ。
前回のVOL.2で書いたが、「これでは地味派手にならないじゃない」という彼女の言葉が発せられた時に、何か大きな力に引き寄せられたのかもしれない。
「引き寄せの法則」が働いたとしか思えないような出会いだったと思う。
引き寄せの法則とは、お客様のためや世の中のためなど「大義」がある場合に限り、その言葉を発した瞬間に大きなエネルギーが働き実現してしまうことである。（「アイドルと結婚したい」や「単純なお金儲け」など、私利私欲のために引き寄せの法則は発生しない）
私はPITTI UOMOに10年以上行き続けているが、サプライヤーのブースに入って話しかけられることは滅多にない。
日本人のエージェントの人達にはよく話しかけられるが、直接サプライヤーから話しかけられる経験は限りなく少なく、自分から話しかける場合がほとんどだ。
貞末タミコの明るい笑顔、社交性と地味派手なファッションセンスは、他人を引き寄せ、人をハッピーにする力を持っているのだと思う。（ちなみに私はこの部分はあまり似なかった、ファッションセンスだけは似ていると思っている）
タミコ 「BREUERは地味派手なのよ！マリンだし、鎌倉にもピッタリ合うと思わない！？」
何度も書いているが、この「地味派手」という言葉は、常に彼女が彼女流のお洒落を表現する上で使っていたお気に入りの表現だった。
地味派手は一見主張がなく、お洒落でないように見えて、実はしっかりと主張があり「見る人が見れば只者ではない雰囲気を持つ究極のお洒落」を意味する。
「ぱっと見でお洒落」は素人の領域で、お洒落のプロは「普通の人には気づかれないバランス」なのだが、それが出来ている人はほとんどいない。お洒落を「目立つこと」だと思っている人は事の他多いが、彼女流のお洒落はそんな単純なものではなく、知的でありながら非常に奥の深いものだった。
そして、地味派手という究極のお洒落の領域を目指したのが鎌倉シャツであり、創業者である彼女の人生そのものだったといえる。
私 「鎌倉シャツにBREUERが入ってくるのはすごいですね！ 業界でも有名な最高級ネクタイですよ！」
当時私は、鎌倉シャツではなくMONCLER、BABOUR、ALDENなどを取り扱う某セレクトショップに勤務しており、BREUERは展開こそなかったものの、その存在は業界でも広く知れ渡っていたこともあって当然知っていた。
現在、鎌倉シャツとBREUERの付き合いは20年以上にも渡り、その関係は良好そのものだが、当時SNSはおろか、ろくにインターネットも発達していない世界において、優れたサプライヤーを探すのは至難の業だった。
彼女は天性の明るさとコミュニケーション能力（英語も苦にしなかった）そして、こなれたファッション「地味派手」を武器に、フィレンツェで毎シーズン行われるメンズ・プレタポルテの最大の見本市であるPITTI UOMOで、BREUER社とコンタクトすることに成功したのだった。
（つづく）
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