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2025年1月、欧州出張 ドイツ編 Vol.2

ASCOT社が位置するKrefeldは、もう一つ、ほとんどの日本人が知らない特別なカルチャーが存在する。

2025.01.16 貞末哲兵コラム


1908年創業のASCOT社が位置するKrefeldは、かつて世界3大絹織物産地の一つとして栄えたのだが、もう一つ、ほとんどの日本人が知らない(絹織物産地も知られていないが)特別なカルチャーが存在する。

Horse Racing(競馬)である。




KrefeldのHorse Racingは古い歴史と伝統を持ち、同時に必要性もあって馬具作りが大きな産業として栄えた。


馬具メーカーといえば、ほとんどの日本人はフランスのあのメゾンを思い浮かべると思うのだが、何を隠そうKrefeldのHorse Racing というハイ・ソサエティな文化を通じて、ASCOT社とそのメゾンとの関係が始まったのである。


そう、そのメゾンの創業者であるティエリ・エルメスはKrefeld出身の馬具作り職人として名を馳せ、その素晴らしい腕前が買われたことにより、貴族文化が全盛を迎えようとしていた、花の都パリへと向かうことになった。
そして、1837年にパリ9区のバス・デュ・ランパール通りに最初の馬具専門店を開いたのが、その歴史の始まりだったのである。




馬具の顧客にはナポレオン3世や、ロシア皇帝もいたそうなのだが、1880年には今も本店にもなっている8区 のフォーブル・サントノーレに拠点を移し現在のエルメスに至る。

その後、人々の移動手段が馬車から車へと移り変わり、需要やニーズに応じて数多くのアイコニックなハンドバッグが生まれ、アクセサリー、パーフュームや時計などにそのコレクションを拡大させていったことは、読者の皆様もよくご存知のことと思う。




ここでASCOT社の話に戻るのだが、人々のライフスタイルの変化に応じて、エルメスが「ネクタイ」というアイテムをそのコレクションに加えようとした時、彼らが真っ先に思い浮かべたのがKrefeldに位置する同社であったことは、ここまでの話からも想像に難しくないと思う。
つまり、馬具産業とシルク織物産業で栄えたKrefeldの文化が、エルメスとASCOT社の関係を育み、現在においてもその関係はより強固な物になっていることを、この地で発見することが出来たのである。


今でもエルメスが採用出来るニットタイの品質はKrefeldにしかないわけだが、斜陽を続けるネクタイ産業においても、彼らの発注は伸び続けている、というとてつもない事実を知ることになった。
そして、ASCOT社が ニットタイ の他に、通常のネクタイを、もう一つのフランスの光り輝く雄であるあの シャルベ(仏)向けに作っているという事実を探り当てることが出来た。

もちろん、シャルベの全コレクションではないのだろうが、ASCOT社の3代目当主(85歳)は少しかすれた声で、「エルメスとシャルベはフェノメノ(驚異的)だよ。」と誇らしげに語ったのである。




「驚異的」とは、つまり下がり続けている世界のネクタイ市場において、逆に「伸びている」という事実に他ならない。



歴史、ファッションや文化が持つ力、やれるんだという強い意志やブランディングによっては、いかにネクタイといえどもまだまだ可能性がある、ということを確認することが出来た。

実際に使われているシャルベの美しく、バリエーション豊かな型紙をKrefeldの地で見ていると、不思議なエネルギーが湧いてくるような気がした。



ネクタイはまだまだ死んではいない。



鎌倉シャツはその可能性を探し続け、多くの顧客の皆様にストーリーと共にその素晴らしさをお伝えする一助とならなくてはならない。(顧客の代理人)
そして、今回なんと通常のネクタイ・コレクションを25 F/W向けに少量ながら(コストがめちゃ高い為、店舗限定)オーダーすることが出来た。


おそらく、KrefeldにおけるASCOT社とエルメスやシャルベのストーリーを知っている日本人はこのブログを読んだあなたと、鎌倉シャツだけである。


今から25 F/Wのデリバリーが待ち遠しいのは、私だけではないはずだ。



つづく

ASCOTのニットタイ一覧はこちら

ネクタイ ASCOTニットタイ

8,690円 (税込・参考価格)

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