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2024年元旦、ファッションについて

今回は、鎌倉シャツの年始に相応しく「ファッション」についてお話ししたいと思う。

2024.04.10 ブログ


皆様、明けましておめでとうございます。 本年もどうぞ宜しくお願いします。


さて、今回は鎌倉シャツの年始に相応しく「ファッション」についてお話ししたいと思う。

今回のブログは、先代の創業者達や、欧州の優れたデザイナーやサプライヤー達から現地、現場でファッションの話を聞き、私自身がアレンジを加えたものである。
したがって、今回の話は鎌倉シャツ流の独自のファッション理論になるが、私がいなくなっても誰かに受け継いでもらいたいベーシックでコアとなる考え方をまとめたものだ。


まず、ファッションの基本だが、洋服においては西洋をルーツ(これについては創業者が毎日のように言っていた)にしているため、イギリス、フランス、イタリア、アメリカの4つの国が主にその流れを作り出している。

ヨーロッパは、北からテイストが堅く、重い順になる、イギリス、次いでフランス、そしてイタリアである。


イギリスには、洋服そのもののほとんどのルーツがあり、スーツの聖地であるロンドンのSAVAILE ROWには、GIEVES & HAWKES、HENLY POOLE、HUNTS MANなど歴史的名店が立ち並び、JERMYN STEETには、TURN BULL & ASSERやEDWARD GREENなども軒を連ねる。
また、イギリスの冬はとても厳しいのでHARRIS TWEEDやFOX BROTHERSなどのウール織物、JOHN SMEDLEYやINVER ALLANなどのニットウェア、BARBARRY、AQUASCUTAM、INVERTEREなどアウターにも数多くの名品が生まれた。
他には、スコットランド発祥のチェック、シルク織物など、クラシックで伝統的なオリジンが数多く存在するのがイギリスの特徴である。



フランスは、パリに代表される都会的なエレガンス、唯一無二のシャツ・ショップであるCHARVET、HERMES、CHANELなどのビッグ・メゾンやモード、クラシックではOLD ENGLAND、南仏やニースにはBREUERやALBERT ARTSなどに代表されるマリン・テイストにスーパー・ラグジュアリーなリゾートウェアが生まれ、ノルマンディ地方からはSAINT JAMESなどのボーダーが誕生した。



イタリアは、北からミラノの都会的なモードの代表格であるARMANIやPRADA、シルク織物が盛んなスイス国境にあるコモ湖近郊、フィレンツェはちょっとだけ都会的で、エレガンスの中に温かみがある、LIVERANO & LIVERANOやFERAGAMO、ナポリにはハンドメイドの高度なテクニックを駆使するATTOLINI、LONDON HOUSE(現RUBINACCI)からはPANICOやANNA MATUOZZOを輩出し、BARBAやLUIGHI BORRELLIなど歴史的カミチェリア※が生まれ、カプリ島ではラグジュアリーでセクシーなリゾートウェアが発達した。※シャツ屋
ナポリは特に不思議な場所で、高度な物作りの哲学の中に適度な野暮ったさ(治安の悪さと美しいリゾートのミックス)が混在しているのが特徴である。



アメリカは、基本的に機能美を大切にし、西海岸の炭鉱業から生まれたLEVI’SやGAPを始めとする労働着としてのデニム、医療用矯正靴で発達したALDEN、スポーツ・シューズという機能そのものを謳うNIKEやNEW BALANCE、極寒を凌ぐためにWOOL RICHやCANADA GOOSE(北米)などが生まれた。
また、東海岸のトラッドやアイビーを代表するBROOKS BROTHERSやJ・CREW、クラシックの世界ではかつて一世を風靡したPAUL STUARTがあり、ニューヨークやブルックリンなどのクールで都会的な(東海岸的)ニュー・ヴィンテージを提案するRRLなどがある。
そして、世界の中心でもある5th アヴェニューには、BERGDOLF GOODMAN、SAKS FITTH、そしてあのTIFFANY & COも軒を連ねる。また、近年ではシリコン・バレーのTシャツなどのテック系スタイルが生まれたことも記憶に新しい。


ファッションや流行は、ごく簡単に上述した4つの国が現代ファッションにおける具体的な歴史的背景を持っていて、これらをミックスかツイスト、もしくはリミックスして作られている。



具体例を挙げると、

RALPH LAUREN(米)はアメリカから見たイギリスをミックスし、RRLは東海岸から見た西海岸のヴィンテージ・リミックス、PURPLE LABELは、アメリカから見たイタリアの最高峰の物作りを用いイギリスをミックスし、ツイストするような表現をしている。

DRAKE’S(英)は、イギリスから見たアメリカ(プレッピー)を意識しながら、イタリアンをリミックスしていて、OLD ENGLAND(仏)はフランスから見た古き良きイギリスを体現しているし(ミックス)、BREUER(仏)は、フランスから見たアメリカを表現(ストライプの向きに代表されるミックス)していたりする。

LONDON HOUSE(伊)(現RUBINACCI)は、その店名からも分かる通り、イギリス人がテーラーの技術を避寒地である自国からナポリに植え付けたものである(ミックス)。




鎌倉シャツ(日)はどうだろうか。

創業時は、BOWBELL’S HOUSEのブランド・ネームから分かるように、鎌倉から見たイギリスを表現したり、VANの流れを汲むアメリカンだったりしたが、BREUERとの出会いや日本のマーケットに合わせてフレンチ・トラッド、時にフランチェーゼ※などのイタリアンなどに変化、対応し続けてきた。
※フランチェーゼというのは、イタリア語でフランスの、フランス人などの意味で、イタリア人が考えるフランス人の襟というルーツを持つ。



現在の鎌倉シャツは、基本的には鎌倉から見たフランスという状態にあると言える。(今後も微妙に変化し続けていくことが大切、ファッションは同じ場所に停滞すると廃れていく)

そこに和の文化、ボタニカル・ダイやコットン栽培などの鎌倉シャツだけのオリジナルなプロジェクトをリミックスしていくようなイメージが良いと思っている。
そして、産声を上げたばかりのKAMAKURA CLASSICSは、鎌倉から見たアメリカと東京のミックスであり、日本の物作りの素晴らしさと多彩さのリミックスが新しい「AMETERA」の世界を作り続けていかなくてはならない。


また、ファッションを語る上で絶対的に欠かしてはならないことがもう一つある。

それは「社会的潮流がファッションを作る」ということである。

これを無視して、単純に古着から物を作ると「学生の卒業制作」になるので注意が必要であり、「時代を読む」ことや、「時代を読もうとする精神」と「時代を読むために様々な勉強をする」ことが、ビジネスとしての「ファッションを作る」ということなのだ。

今、世の中はようやくコロナからは明けてきたものの、度重なる自然災害、絶え間ない紛争、テクノロジーを使った強烈な主義主張などまだまだストレス・フルでシリアスな時代であることから、イギリスほどカッチリし過ぎたくないし、イタリアのセクシーで開放的なファッションでもないことから、その間のフランス的なファッションが良いだろうと捉える。

もしくは、アメリカのトラッド(ボタンダウン)をベースにした鎌倉シャツの根底にあるものを大切にするのがいいだろう。

また、強いてイタリア内で捉えるなら、都会的なミラノからフィレンツェくらいまではオッケーであるものの、ナポリの解放的で、セクシーな提案は影を潜める時代と言える。
そして、巷で盛んに言われているサスティナビリティも十分に考慮しながら「知的なファッション」を目指していかなければならないのは言うまでもない。

したがって、2024年の鎌倉シャツは鎌倉から見たフランスのイメージを持ち、社会的潮流を意識しながら大枠のディレクションを組んでいく予定で、2023年と傾向や方向性が変わることは特別ない。

これまで通り、フレンチ・トラッドやフレンチ・アイビーを主軸にしながら、パリの都会的な要素をほんの少し取り入れていきたいと考えている。

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