鎌倉シャツ創業者との対話 Vol.9
鎌倉シャツ副社長でディレクターの貞末哲兵が、創業者である父・貞末良雄について語ります。
今これを書いているのは、2024年の8/25(日)の20:00を少し回ったところなのだが、月日の経つ早さに驚かざるを得ない。
漠然と冒頭の文章を書いていて、今更ながら、そういえばもう2024年だったのか!と思ったのと、そして、今年も三分の二が終わろうとしていることを感じている。
そんな中、先日アップしてからまだ間もないこのシリーズの続編を書いているのだが、その理由は、あの「知の巨人」として知られる養老孟司さんとお会いする機会に恵まれ、鎌倉シャツの創業者と類似していることを発見したからである。
養老先生は、皆が知っている名著「バカの壁」をはじめとして、その他にたくさんの素晴らしい著書や、対談、動画など、その全てが知性的なのだ。
知性的というと、一般的には書斎に籠って本を読んだりしていることをイメージする場合が多いのだが、養老先生は真っ向からこれを否定している。
人間には、入力(インプット)と出力(アウトプット)があるのだが、それは頭で行うことではない。
人間が良質なアウトプットをするためには、当たり前だが良質なインプットが必要なわけで、それらは頭ではなく「体」で行うことの重要性を説いている。
入力(インプット)は頭ではなく体、すなわち五感なのだ、と養老先生は再三指摘しているのである。
目、耳、鼻、舌、身から出来る限り良質なインプットを入れ、その結果、良質なアウトプットが生まれる。
ところが、昔と比べて現代人は、驚くべき程に五感の入力が減ってしまったことを養老先生は心から嘆いていらっしゃるのだ。
そして、そのことに誰も、全く気付いていない。
現代人は、同じような数字、誰もが閲覧可能なインターネット上の情報や、上部の概念のみによってインプットが繰り返され、アウトプットの質を競い合っている。
現代人の主なインプット手段である数字、インターネット、上部の概念、これらを良質な物やオリジナリティのある物に変換することは難しく、今後全ての人間のアウトプットは同質化に向かい、フラット化していくことが予想されている。
養老先生は87歳、鎌倉シャツの創業者は84歳になるのだが、彼らが現代社会を危惧し、五感を使うことの大切さを伝えていたことを我々は忘れてはならないのである。
しかし、実践するのは難しい。
なぜなら、数字、インターネットは過去の現象の事実であるわけだから、否定することは出来ず、その世界に引き込まれるのは当たり前であり、一方、五感を使った「その人のインプット」は間違いなく本物で、良質で、オリジナリティを生むアウトプットになる可能性が高いのだが、上述した過去の現象の事実と対極にある為、誰にも良いか悪いか判断出来ない弱さを持っている。
つまり、現代社会においては、良質なインプットとアウトプットは絶対的少数になってしまい、多数派に押し切られてしまうケースがあるのではないだろうか。
「オフィスで座っていては何も生まれませんよ。体を使って様々な体験をしなさい。」
鎌倉シャツの創業者は、常に体験からの入力を重視し、社員を教育していた。
「仕事は体で覚えなさい。頭ではありません。」
創業者から言われた貴重な多くの教えが、今も私の中に息づいている。
つづく
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