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美味しんぼ考察 Vol.1

このブログを読んでいる方で「美味しんぼ」という漫画についてご存知の方はいらっしゃるだろうか。

2025.05.21 貞末哲兵コラム


今このブログを書いているのは、2025年3/26(水)の7:50を少し回ったところだ。

このブログを読んでいる方で「美味しんぼ」という漫画についてご存知の方はいらっしゃるだろうか。


1983年のビッグコミック・スピリッツ20号より連載が始まったそうで、2020年10月時点で累計発行部数は1億3,500万部を突破しているそうである。

私がこの漫画の第一巻を目にしたのは、小学5年生くらいに父の書斎から見つけて、勝手に読んだのが始まりだったと記憶している。


第一巻では、主人公の山岡士郎が勤める東西新聞社が創立100周年の記念事業として「究極のメニュー」作りの企画が立案されたことから始まる。

山岡は、稀代の陶芸家、画家、書家、美食家として名声を誇る海原雄山の息子でありながら、反発して勘当され、「山岡」という母方の姓を名乗り東西新聞に勤めていた。

生まれ持った天性の味覚を持ち、海原雄山より英才教育を受けた山岡は、うっかり担当試験に合格してしまい、東西新聞の究極のメニュー作りの担当者になるのだが、第一巻の時点では山岡は単なるグータラ社員(怠け者の意味)で、ほとんど仕事をしない万年平社員という位置付けであった。

父親に反発し、別姓を名乗り、グータラな生活を続ける山岡が、名声を欲しいままにする海原雄山の息子である、ことは誰にも気付かれるはずもなく、東西新聞で行われた究極のメニュー作りの担当試験に合格したのも「単なるまぐれ」という評価を受けていた。


そして、もう一人試験に合格したのが、後に山岡の妻となる新入社員・栗田ゆうこだった。

グータラ社員に新入社員、何とも頼りない二人が究極のメニュー作りを担当することになってしまったので、社主である大原大蔵は、美食の大家達に援軍やアドバイスを要請することにした。

美食の大家達は、当時の日本ではまだ珍しかった「フォアグラ」「キャビア」「トリュフ」という世界三大珍味を有り難がるような権威主義の象徴のような人物象が描かれており、山岡はこれに真っ向から対立し、彼らに勝負を挑むのであった。

当時、10歳くらいだった私は、世界三大珍味など見たことも聞いたこともなかったのだが、権威に挑む山岡に痺れ、感動した謎の小学生だったのである。


今思えばこの時、私が「反・権威主義」という思想を取り入れた(創業者からの影響もあった)瞬間であったように思う。


ブログ「鎌倉シャツ創業者との対話」シリーズ



美食の大家達は、「フォアグラより美味い物はこの世にない」と言い切ったが、山岡はこれを真っ向から否定し、「もっと美味い物を食べさせてやる」と意気込んだ。

そして、一週間後に山岡が用意したのが「あん肝」だったのである。


あん肝、一杯飲み屋で出てくる定番料理で、その響きはフォアグラに比べるとあまりにも陳腐で庶民的、比較するには到底及ばない代物に思われた。

ところが、大自然の恵みの中で豊かに育った鮮度抜群のアンコウの肝は、人間の小賢しい知恵で人工的に作られたフォアグラより、遥かに芳醇で豊かな味わいだったのだ!

美食の大家達は、あん肝の美味しさには一定の理解を見せたものの、フォアグラというネームバリューが持つ固定概念を覆すことが出来ずにその場を去ったのである。


当時、10歳だった私は、美味しいか不味いかは、他人や世論が決めるのでなくて、己で判断することの大切さを「美味しんぼ」第一巻から学んだ。

以降、私は現在に到るまで人の話を鵜呑みにしたことはなく、自分の頭で考えて、自分で判断して行動するように努めてきたつもりである。

美味しんぼの影響を受けて、日本や海外の美味しいと言われているレストランにも行ってみたが、今の私にとって「本当に美味しいものは何か」と言われたならばこう答えるだろう。


「空腹に勝る美食なし」である。


我々は先人達の絶え間ない努力により、いつでもどこでも美味しい食べ物を入手するシステムを手に入れた。

気付いたらコンビニへ行き、何かを常に食べている状況を作っているので、そうなるとちょっとやそっと美味しい物を食べても感動しなくなる。

一度思い切り空腹にして、コンビニのおにぎりでもマックやケンタッキーでも食べてみると、それはフォアグラよりも美味しく感じられるのである。


良かったらグルメの秘訣、「空腹」を一度お試しいただけたらと思う。

それでは、また。



つづく

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