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欧州出張<後編>

前・中・後編にわたってレポートする欧州出張コラム、お楽しみください。

2024.04.10 ブログ

FERMO FOSSATI社訪問

今これを書いているのはパリのホテルで、2024年の1/17(水)の10:30を回ったところだ。

先ほどホテルで朝食を摂ったのだが、オーダーしたのはイタリアだと「カプチーノ」に対して、パリではやはり「カフェ・オ・レ」である。

久しぶりに本場で「カフェ・オ・レ」を飲んだのだが、これが美味しい。
カプチーノはミルキー過ぎてしまう場合もあるのだが、カフェ・オ・レはしっかりとコーヒーの味を残しているので日本人好みだと思う。

なぜこの話をしているかと言うと、私の連載でもお馴染みのもう1人の創業者である貞末タミコが、パリでよく「カフェ・オ・レ」を飲んでいたことを思い出したからである。

彼女はパリをこよなく愛し、1人でも良く訪れていたが、クロワッサンとカフェ・オ・レがあれば他には何もいらないというくらいだった。

今回の出張では、パリで彼女は何を感じ、何を考え、何を思ってビジネスに生かしていたかも捉えてみたいと思っている。

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さて、今回のレポートはイタリア・コモ最古のsilk woven※ファクトリーであるFERMO FOSSATI社ついて話してみたいと思う。
※シルク・織物

BIANCHI社と並び世界最高峰の名を欲しいままにしているFOSSATI社との取引は、鎌倉シャツにとって長年の夢でもあった。(大人の事情があって、なかなか訪問出来ておらず、いつか行かなくてはと思っていたところに、コロナが長引いてしまった。)

しばらく念願叶わなかったのだが、2023年6月にその置き土産を取りに行ったのだった。

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ファッション業界における大人の事情を考慮して、鎌倉シャツではFOSSATI社の生地を使ったネクタイは今まで展開していなかったのだが、いよいよ、この2024年春夏からはデリバリーが開始される。(再三登場しているが、ファクトリーへの直接訪問は、大人の事情から難しかった。)

今回は2回目の訪問となったが、担当のGIANNIさんはこの道40年の大ベテランであり、凄まじいプロフェッショナルだった。

コバぶろぐでもあったが、まずはFOSATTIが持っている最高品質である「スーパー・レップ」という、旧式のシャトル織機を使った味わい深い生地を発注した。

めちゃ高いのだが、鎌倉シャツなら他よりはお安く出来るし、素晴らしいネクタイを多くの方にお届けするために我々はコモまで来ているのである。

そして、もう一つはツイル、綾織りと言われる組織を使った「スーパー・ツイル」と呼ばれる生地だ。

私は、ネクタイの現場に長いこと身を置いていたのだが、鎌倉シャツの創業者である貞末良雄の私物で、90年代後半〜00年初頭にかけて作られていたと思われるBREUER社のドット(水玉)・ネクタイより品質の良いツイル組織を見たことがなかった。 

そこで、今回は現地に当時のBREUER社製のドット・ネクタイを付けていき、GIANNIに聞いてみたのである。

GIANNIは、ああこれね。
といった感じで1分もかからないうちにそのクオリティを見つけて提案してきたのだった。

その名も「スーパー・ツイル」と呼ばれ、独特のハリとコシを持ち、乾いたシルク鳴き(生地が重なった時に鳴る音)は、プロはもちろん、顧客の方は病みつきになるに違いない。

GIANNIは、いつか私が作ってみたいと思っていた生地をいとも簡単に探し出し、提案してきたのである。

おそるべし、GIANNI
おそるべし、FERMO FOSSATI
おそるべし、ファッション大国・イタリア

鎌倉シャツのネクタイいちらんはこちら

CLASSICO SETA社訪問

今このブログを書いているのは、パリで現地時間17:00を少し回ったところだ。

今回のレポートは、鎌倉シャツと長年取引のあるイタリア・コモのsilk woven mill(シルク織物工場)であるCLASSICO SETAを訪問したお話。

担当が小林なので、私自身訪問するのは、6,7年振りとなった。

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担当のPAOLOさんは営業マンとして、非常に優秀でクライアントの好みを嗅ぎ分け提案する能力に長けているだけでなく、日本語を熱心に勉強するなど、こちらとしても頭が下がる姿勢を見せてくれている。

PAOLOさんは、日本に年4回訪れ、その度に小林やネクタイチームと打ち合わせをしているので、かなりスムーズな発注となった。
ただ、今は派手目な柄はダウントレンドであることから、そこだけは方向転換をしてもらったのだが、概ね鎌倉シャツのお客様が好きなネクタイの発注になったのではないだろうか。

↑美しい柄に喜ぶ小林

今回は、初めて社長さんにもお会いしたのだが、ご高齢になられた今も柄を組んだり、デザインをしたりと熱心に仕事をされているそうである。

そして、発注業務を終えた我々は、コモにあるネクタイの縫製工場へと向かった。

コモの生地工場は何度も訪れているのだが、縫製工場においては実に初めての訪問となった。

この工場は、写真が完全にNGであったため詳細をお伝えしにくいのだが、いくつか訪れたことのあるナポリの縫製工場の人達よりも、警戒心が少ないような気がした。

ナポリは常に閉鎖的で、とても警戒心が強かったことを思えば、今回の工場訪問は少し楽に感じることが出来た。

この工場は主にプラダのネクタイを縫製していて、他に取引先は全世界にあるようで、その高い技術力にかなりの自信を持っているだけでなく、工場を拡張する予定があるようだった。

ダウントレンドであるネクタイにおいて、世界的産地のコモで生き残ったファクトリーは、優れているところが多く、更に投資の姿勢まで見せてくれたことには大変勇気付けられた。

そして、我々はコモを後にし、今回の出張の最終目的地であるパリへと向かった。

現行のネクタイはこちら

パリの通りを散歩

今このブログを書いているのは、2024年1/19(金)の3:40。パリのホテル。

今日の夕方の便で日本へと向かうのだが、久しぶりにパリに来て思うのは、「全てが高すぎる」という現象である。

ミラノでも感じてはいたのだが、パリのRue Saint-Honoréや、Avenue des Champs-Élysées(おーシャンゼリゼ♪でお馴染みの)など世界有数の通りを歩いていると、何も買える気がしないのである。

為替の影響はもちろんあるのだが、インフレと世界の二極化が凄まじいスピードで進んでいると感じる。

日本は大半が中間層という世界的にも例を見ない奇跡の国で、治安も良く、安価で良い物が手に入るということが、改めて今回欧州を見てきた総論である。

CHARVETに入ってみると、シャツは490ユーロ均一ですと言われた。

なんと!8万円均一とは何事なのだろうかと思いながら、あたかも知ってるかのように相槌を打っておいたが、これはキツイ。

だが、日本でCHARVETを買うと12〜18万くらいするので、安いと言えば安いのか⁉️

鎌倉シャツだと6,900円で上質なシャツが買えるが、こちらのレートだとおよそ45ユーロで、CHARVETだとソックスがやっと一足買える程度である。

海外における日本人の三大決まり文句※である「ちょっと考えますね」と言ってお店を後にした。※他に、ビア、セイム

CHARVETがあるこのエリアは、VANDOME広場と言われていて、#28のCHARVETはもちろん、グランサンク(Les Grand Cinq、偉大な五つの宝飾ブランド)と呼ばれる、MELLERIO、CHAUMET、MAUBOUSSIN、BOUCHERON、VAN CLEEF & ARPELSなども軒を連ねる。

鎌倉には鎌倉五山(建長寺、円覚寺、寿福寺、浄智時、浄妙寺)という世界から見た神秘である「禅の聖地」が存在しているが、その「宝飾ヴァージョン」ということになる。

尚、CARTIERはグループに属したくないという理由で、脱退しているそうである。

そして、この素晴らしい場所に我らが日本のCOMME des GARÇONSがある。

創業者の川久保さんは著書か何かで「パリでなくてはならなかった」という話をしていたのだが、その理由も頷けるすごい場所である。

VANDOME広場は、西洋ファッションと文化の中心地なのである。

ここに軒を連ねるパリの優れたブランドを一言で表現するならば「文化」ということになると思うが、我々日本人には理解の難しい世界である。

当たり前だが、文化はお金で買うことは出来ないし、全ての情報がスマホの中にあると本気で信じている人達には、まず理解出来ないだろう。

大前提として、東の果ての国の我々からすると、西洋の文化は理解が難しく果てしなく遠い。

洋服は、西洋を起源としていることを改めて実感するのである。
ただし、逆もしかりで西洋の人々からすると東洋は「神秘」であることも忘れてはならない。

日本の素晴らしさや海外から見た視点を忘れると、西洋文化は単なるコンプレックスとなったままになってしまう。

日本は一時経済大国になったことや、独自の日本文化を築き上げ、海外へとその叡智や技術を広めたことから西洋だけでなく、東南アジア諸国や世界中から高く評価をされている。

欧米のハイソサエティの人達が、偉大なる鎌倉五山を前にした時、何を思うだろうか?
日本の文化は神秘に包まれていて、理解が難しく果てしなく遠いと思うに違いないのである。

西洋の文化を認めつつ、洋服の起源としてのリスペクトを持ちながら、自国である日本という国に対するリスペクトも忘れたくないものだ。

西洋だけでなく、自国へのリスペクトを強く認識するようになったのは、2020年に鎌倉回帰を果たし、「ローカルとしての鎌倉シャツ」を確認したことによる。

地球は一つであり、西洋と東洋のリスペクトを保ちながら、本当の意味でのリミックスが出来た時、次の世界に行けるような気がするのである。

そんな感覚がより一層強くなった欧州出張となった。

最後になるが、この欧州出張ブログを読んでくださった全ての方に感謝を申し上げたいと思う。

それでは、またどこかで。

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