欧州再訪日記 vol.2
3年半振りのヨーロッパ出張もいよいよ佳境に入ってきていて、残すところあと2日となった。
3年半振りのヨーロッパ出張もいよいよ佳境に入ってきていて、残すところあと2日となった。
このブログを書いているのはロンドン・パディントンのビジネスホテルである。
このあたりはロンドンの南西部にあり比較的治安も良く、ヒースロー空港から直接シャトルが出ていることもあって、多くのビジネスマンや観光客で賑わっているエリアとなっている。
近隣には美しくも広大なハイドパークがあり、通り抜ければロンドンの中心であるメイフェアまでも徒歩で行けるとあって、私自身もこのエリアに宿を取ることが多くなっている。
欧州再訪日記と言いながら、No.2を書くまでにかなり時間を要してしまったわけだが、ニース・フィレンツェ・コモ・ミラノとアポイントが目白押しで、しかも今月のMONTHY KAMAKURA※の執筆(※月一で配信しているロイヤルカスタマー宛のメールマガジン/ショップブログでも公開中)もあって旅も後半に差し掛かってしまっている。
細かな仕事の内容や、アポイントで会った人々についてはMONTHLY KAMAKURAに譲るとして、ここでは他の視点でここまでの出張を振り返ってみたい。
Vol.1で書いた通り、今の鎌倉シャツには、ホームとしての鎌倉が歴然として存在し、そのおかげで今回多くの欧州の人と会っても気後れすることが全くなくなった。
(ヨーロッパの一流ファクトリーの人達はキャラクターが強烈なので、以前は気を抜くと飲み込まれることもあった)
妙に落ち着いているし、焦ることもない。
不思議だ。
背景を持ち、意識するだけでここまで違うものなのかと思う。
鎌倉は、世界有数の場所と対峙しても全く引けを取らないのだ。
コロナの前、鎌倉シャツはメイド・イン・ジャパンを掲げていてもそこがどこなのかはっきりしていなかった。実際にシャツを作っている福島や九州などは、工場はあれど、当然ながら鎌倉シャツの精神は“鎌倉という場所”から生じるのだ。
2020年、コロナがあって身動きが取れなくなった私達は、鎌倉にオフィスを作り、弊社杉江、小林を中心に、その他多くの社員の力によって、クリエイティブを一から鎌倉でやり直すことにした。
その中で多くの鎌倉の人達と繋がりを持つことによって、自分達の「ホーム」と「メイド・イン・ジャパン」という精神の拠り所をこの地に根差し始めることが出来たのである。
コロナが明け、私含め世界中の人々は再び移動を始めたわけだが、今度改めてグローバルな人材が求められていくことは間違いないところだと思う。
グローバルな人材とはなんだろうか?
まさか、ただ単に英語が話せることや、テクノロジーに強いことではないと思う。
もちろん、それなりにそれらの技術があるに越したことはなく、言葉がある程度出来なければ海外では戦えないし、テクノロジーがなければ現代のビジネスは成り立たないのも事実だ。
しかし、私が見てきたファッションや衣食住に関わっている優れた人達は、上述した技術よりも精神的な背景を拠り所にし、ホームを大切にしている。
フランス・ニースのBREUERは美しい「コート・ダジュール」の海を背景にしているし、イタリア・コモの世界最高峰の人々は、「美しい山と湖」をホームにしてクリエイティブを形成している。
想像してみてほしい。
彼らにそのホームや、背景がなかったらどうだろうか?
誰からもリスペクトは受けないし、そもそも人を魅了するものを作れないはずだ。
地元の土地や自然をこよなく愛し、大切にすることからクリエイティブィティは始まり、それがやがてグローバルへと広がっていく。
エルメスなどの世界的ブランドも、「パリ」があって初めてそのストーリーを人々は想像するのであって、パリという歴史的なプロポーションなしでは何も始まらない。
シャルベも同じで、パリ・バンドーム広場にお店を構えてクリエイティブを作るから「シャルべ」が「シャルべ」たり得るのだ。
ホームを大切にし、クリエイティブを作ることは、ファクトリーやブランドだけでなく、働いている人間そのものも同じ方向を向いて走ることが重要で、違う動きはクリエイティビティとグローバル化への大きな弊害となる。
エルメスの内部にパリ出身の人間がどれだけいるのだろうか。
そんなことは関係なく、エルメスの一員となった以上、パリをホームとして認識し、リスペクトし、愛しているはずだ。
世界の優れた人達に共通しているのは、グローバルであればあるほどローカルを大切にしていることに他ならない。グローバリゼーションとローカリズムは同意義語と言っても過言ではないのだ。
鎌倉シャツも「鎌倉」というホームを改めて全員で認識し、リスペクトし、愛するようにならなければならない。
鎌倉シャツが世界に冠たるブランドになるために…
2023年6月 ロンドンにて
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