『しまなみコットンのお話』
11月某日、青空の下に子供達の笑い声が広がり集う人々は優しい笑顔に包まれていました――
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『しまなみコットンのお話』
11月某日、青空の下に子供達の笑い声が広がり集う人々は優しい笑顔に包まれていました――温暖な気候で知られる愛媛県今治市、そして地元神奈川県鎌倉市から程近い寒川町。共に記念すべき第一回となるコットン収穫祭が行われました。
今回は鎌倉シャツで新たにスタートした国産コットン栽培のお話です。
そもそもコットン…という方が多いはずです。
世界に流通する衣料品の内、約3割を占めるコットンはポリエステルに次ぐ繊維原料であり天然繊維のシェアとしてはダントツのシェア9割を誇っています。ところが意外と知られていない生態系。どんな花や実をつけるの?そして綿(コットン)はどの様に収穫されるのか???
1世紀前は日本各地で栽培されていたコットン。今では生産者さんも数えるほどになりました。それどころか農業界では食の多様化や低価格輸入品の増加に伴い下落を続ける食糧自給率。その影響によって農家さんは激減し様々な社会問題を引き起こしています。
国土における農地の割合もこの30年で2割減り現在はわずか13%となり毎年減少の一途。一方で荒廃地を含む耕作放棄地はこの30年で4倍に増加し深刻化しています。
同様に危機的状況を迎えている繊維製品の国内自給率は僅か1.5%となりMADE IN JAPANはいよいよその存在価値を問われています。
原料や生産地を他国に依存する現況は各製造工程を経て製品として日本各地へ届くまでに多くのエネルギーを使用し、大量の炭素排出やロスを生み出しています。
低コスト品を求めて海外で大量生産された商品の中には消費者の手に渡る事なく処分される物も少なくないのです。
これら繊維産業課題と社会問題の解決を目指して休耕田の活用による国産コットンの栽培に挑戦しよう。ひいては純国産による全く新しいサプライチェーンの構築と高付加価値商品の製造企画から出荷までを国内完結させ継続的な環境負荷軽減の実現に取り組もう。
こうして2022年4月プロジェクトはスタートしました。
原料から販売までを一つのサイクルと考え、作りながら販売する事。また国内生産による物づくりの透明化を一層強化し生産者の思いが通じる商品とサービスを提供する事。安心して選ぶ事が出来、長く使うことの出来る商品とは何か?
一粒の種から大きく育っていくコットン。その成長過程からは有限なる自然物の尊さや逞しさを教わりました。
コットンは世界中で栽培され、その品種は100を超えると言われています。
綿のランクは繊維の長さによって等級分けされます。(上の写真:超長綿の紡績の様子)
【低】短綿→中綿→長綿→超長綿【高】
とりわけ超長綿となると生産量は全体の数%と希少で生産地も限定されるとされてきましたが、鎌倉シャツは創業来から変わらずに超長綿を使用し続けております。
当然栽培するなら世界最高ランクの超長綿、他に選択肢はありませんでした。
そんな時でした。この限定種の栽培を長く研究しておられた愛媛県今治市『しまなみコットンファーム』さんとの出会いが物語の始まりです。
10年以上にわたる研究は、出来不出来を繰り返したご苦労の日々だったそうです。
コットンは春に植え冬に収穫するという一年生植物ですから毎年栽培法を少しずつ変えてみては最適解を探してこられたわけです。
そうして継承された超長綿の貴重な種、ようやく軌道に乗ってきた頃、ご高齢もあり体調を崩され今までの様な畑仕事は難しくなってしまいました。私達が相談にあがったのはちょうどそんな頃でした。
なかなか指導しに遠方には行けないけれど定期的に今治まで来てくれるならば…。
こうして私達の超長綿栽培はスタートしました。
以降毎月今治を訪れては成長記録をつけ少しずつ理解を深めて行きました。初年度はハウスでの演習、翌年は畑の一部で実習指導をしていただきました。
全くの農業素人だった私達を支えて下さいましたこと改めて心より感謝申し上げます。
そして2024年5月10日(コットンの日)。
2年前たった2名で作業をスタートしたあの日からは夢の様な光景が訪れました。私達の小さな活動を応援して下さる皆様がコットンファームに集まってくれたのです。
地元の企業様、行政の皆さま、近隣の学生さん達、日頃からお世話になっている取引先様そして鎌倉シャツ社員…総勢230名で初植祭を行いました。
成長を楽しみにみんなで1株ずつ丁寧に植えたあの日は思い出に残る1日となりました。
あれから半年。
待ちわびた収穫祭ではそんな皆様達と久々にお会いする事が出来ました。大きく育ったコットンを見ていただき、1つずつ手で摘み取っていきます。
広い畑も皆んなで作業すればあっという間。
ふわふわとした極上のコットンが次々に収穫され袋一杯になりました。毎年11月はコットン収穫祭が会社のイベントになっていくでしょう。
愛媛県や神奈川県における国産超長綿の栽培から収穫に加えて、岡山県で紡績(糸に紡ぐ事)、兵庫県で織布(布に織り上げる事)、縫製は日本各地の工場さんが担当して下さいます。これらの全製造工程を国内で完結させるという取組みは世界的にみても例がほぼありません。
優れた日本各地の地場産業に光を当て繊維産業の継続発展に向けて生産者さん達と共に努力していく事。同時にコットン栽培から始まるサプライチェーンを透明化するだけでなく、農作業を通じて地域の人々や学生さん達との親交を深めていきます。更には物の製造過程を知る事で得られる「つかう責任」の考えを引き出す機会の提供として、地域一体型オープンファクトリーの仕組み作りに協力工場の皆様と取り組みます。
世界基準を満たす繊維製品の企画、生産、販売を軸に「MADE IN JAPAN』をキーワードとし未来に向けた社会貢献が出来る新たなサプライチェーン構築を目指す事を掲げ、コットン収穫祭は無事に閉会しました。
この1年、延べ300名以上の皆様にコットンファームにお越しいただきました。
皆様お一人お一人のお陰で盛大な収穫祭を迎える事が出来ました。
この場をお借りし改めまして社員一同より心より感謝申し上げます。
昨年収穫した国産超長綿『しまなみコットン』を使用した純国産シャツが多くの生産者さん達の想いをリレーし完成しました。
長く大切に着ていただければこの上ない喜びでございます。
コットン栽培から収穫、紡績、織布、縫製などの全製造工程を国内で完結させる、ALL MADE IN JAPANシャツの記念すべき第一号となる「しまなみコットンシャツ」(税込13,200円)。
11月22日(金)より、国内全店舗・オンラインストアにて販売中です。
今回の語り手
メーカーズシャツ鎌倉 株式会社 取締役 佐野貴宏
1978年、千葉県生まれ。法政大学工学部卒。2000年にメーカーズシャツ鎌倉入社。販売から企画・生産・素材開発などに携わる。日本中の産地を周り、メードインジャパンのシャツ作りに邁進する。2017年、取締役に就任。
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