松下幸之助を考える Vol.1
「道に迷っていた」私は『道をひらく』というタイトルに惹かれ、この本を手にしたのを覚えている。
「創業者との対話」、そして「もう1人の創業者との対話」というブログを始めて久しいが、新しいブログを開始してみた。(それぞれ続くのでご心配なく)
「松下幸之助を考える」というタイトルなのだが、何を今更と思う方もいらっしゃると思う。
しかし、彼の本を読んだことがある人でも、一度読んだからといってその深い内容は簡単に理解できるものではなく、何度も読み返し、さらに自分の成長度合いに合わせて繰り返し読むことが重要だと思う。
たくさんの名著があるのだが、私が読み続けているのが不朽の名作『道をひらく』である。
確か最初に読んだのが私が30歳くらいの頃だったと思う。イタリア修行から戻ってくる時の飛行機だった。
「道に迷っていた」私は『道をひらく』というタイトルに惹かれ、この本を手にしたのを覚えている。
情緒を重視するアパレル産業は、ある意味情報を握っていること(特に日本人にとってはヨーロッパ)が重要となるが、ただ服が好きなだけだった、何も武器と呼べるものを持っていなかった私はイタリア修行に出かけたのだった。
イタリア語は特殊な言語で、20代後半(イタリア修行に出た歳)から覚えるのにはかなり苦戦をした。
例えば、椅子は英語でchairなのはだいたい分かると思うが、イタリア語ではsediaとなる。
イタリア語には英語に似た単語もあるが、基本的には別で、文法的には動詞の変化で主語を判断する特殊な言語なのである。
懸命に勉強していたが、イタリア語を覚えられない、上達しない日々が続き、私は焦っていた。
そこで、『道をひらく』に出会い、励まされ、今日までなんとかやってこれたのである。
その中で特に励まされたのが「サービスする心」であった。以下抜粋。
「与え与えられるのが、この世の理である。
すなわち、自分の持てるものを他に与えることによって それにふさわしいものを他から受けるのである。
これで世の中は成り立っている。
だから、多く受けたいと思えば多く与えればよいのであって、充分に与えもしないで、多く受けたいと思うのが虫のいい考えというもので、こんな人ばかりだと世の中は繁栄しない。
与えるというのは、わかりやすくいえばサービスするということである。
自分の持っているもので、世の中の人々に精いっぱいのサービスをすることである。
頭のいい人は頭で、力のある人は力で、腕のいい人は腕で優しい人は優しさで、そして学者は学問で、商人は商売で・・・。
どんな人にでも、探し出してくればその人だけに与えられている尊い天分というものがある。
その天分で、世の中にサービスをすればよいのである。
サービスのいい社会は、みんなが多く与え合っている社会でだからみんなが身も心もゆたかになる。
おたがいに繁栄の社会を生み出すために、自分の持てるもので精いっぱいのサービスをし合いたいものである。」
とあり、当時何も能力がないと思っていた私は、
「どんな人にでも、探し出してくればその人だけに与えられている尊い天分というものがある。
その天分で、世の中にサービスをすればよいのである。」
という文章に出会うことで救われたのだった。
世の中の成り立ちは一つの能力やサービスではなく、多くの個性を尊重し合うことや各々のサービスによって成立しているのである。
何度この文章を読んだか分からないが、このブログを書きながらも読み、その深さに改めて感動するばかりであった。
(つづく)
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