ぼく盲導犬、よろしくね 【vol.9】
チャリティーハンカチを通じて盲導犬の育成支援を行っている鎌倉シャツより、さらに盲導犬のことを知っていただけるようコラムを連載中です。
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チャリティーハンカチを通じて盲導犬の育成支援を行っている鎌倉シャツより、さらに盲導犬のことを知っていただけるよう、わんちゃんの視点からコラムを連載しております。ぜひお楽しみくださいませ。
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引退の日
お父さんが電話している。
「はい、わかりました。では明日宜しくお願いします」
電話を切ったあと、お父さんはおもむろに何かを紙袋に詰め込んでいる。
あれ?それはお父さんが最初に買ってくれたぬいぐるみ。
あ、それは濡らすと涼しく感じる洋服。
ぼくによく似合う色だって、お父さんが褒めてくれたよね。
でも今は冬。なんで急に押入れから出しているんだろう。
「明日からまた出張?それとも旅行かな?」
ぼくはそんなことを考えつつも、忙しく準備するお父さんを眺めているうちに、うつらうつら眠りに落ちていた。
お父さんがぼくに寄り添い、優しく撫でてくれる夢を見ながら。
翌朝お父さんと向かった場所は、盲導犬訓練センターだった。
ぼくの大好きな訓練士さんが、お父さんと長い時間お話をしていた。
やっとお話が終わり、お父さんが立ち上がったので、ぼくも「よっこらしょ」って立ち上がろうとすると、お父さんはぼくの身体からゆっくりとハーネスをはずした。
「ありがとう。本当にありがとう。 お前に出会えてお父さんは本当に幸せだったよ」。
ぼくをぎゅっと強く抱きしめながら、そう話すお父さんの身体は震えていた。
ぼくはなんだかわからなかったけど、お父さんに抱きしめられることがうれしくて、しっぽをブンブン振った。
ブンブン振れば振るほど、お父さんの「グッド、グッド」という声は震えてとぎれとぎれになっていた。
そしてぼくは、白い杖で背中を向けたお父さんとは逆の方へ連れていかれたんだ。
そう、この日はぼくが盲導犬を引退する日だった。
あの町へ
ぼくと別れたお父さんは、そのまま訓練センターで次のパートナーになる盲導犬との共同訓練に入るんだ。
たとえベテランの盲導犬ユーザーでも、新しいパートナーと引き続き安全に歩いていくために、必ず訓練を行うんだよ。
そしていつも一緒にいたお父さんと別れ、ぼくは訓練士さんと一緒にワゴン車で出かけたんだ。
次回はいよいよ最終回。
引退した後のぼくの暮らしをお話するね。
製作協力・写真提供:公益財団法人日本盲導犬協会
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