上品なお洒落について Vol.2
私の母である貞末タミコはファッションの達人で、
トラディショナルな服装を愛していました。
白やブルーのシャツ、ボーダーのバスクシャツ、
ケーブルのコットンやカシミヤのセーターに
トレンチコートがお決まりのスタイルでした。
コーディネートの色は、
白、ブルー、ネイビー、ベージュ、グレー、ブラック
以外は身に付けず、柄は無地系が多いのですが、
ロンドンストライプやブラックウオッチなどの
トラディショナルなチェックも上手に着こなしていました。
小物は、長年使い込んだエルメスのスカーフやバッグ、
時計はロレックスのコンビやカルティエで、
ティファニーのシルバーアクセサリーを愛用していました。
そんな彼女のお気に入りの場所は、彼女が生まれ育った鎌倉や、
出張でよく訪れていたパリ、南仏のニース、カンヌ、
そしてモナコでした。
生まれてからずっと鎌倉に住んでいたこともあって、
鎌倉マダム、鎌倉夫人というものを常に意識し、
上品さの中にマリンスタイルを
取り入れたスタイルは地元でも有名で、
テレビに映ることもしばしばありました。
フランスには年に四~五回は仕事を絡めて訪問し、
現地の方々にも様々なところに
連れて行ってもらっていましたので、
そんな彼らとの対話の中からも
フランスの文化や空気感を体感していたようです。
一方、私はイタリアに住んでいたこともあり、
現在も出張でよく訪れますが、パリやニースにもよく行きます。
そこで出会うレベルの高い人、上流階級の方から感じるのは、
ヨーロッパの名家では、名品を大切に長く愛用し、
代々受け継いでいく文化があるということです。
私の知り合いのフランス人女性は、
ほぼいつも同じ格好をしていて、
バッグは祖母の代から受け継いだエルメスのバーキン、
お父さんから受け継いだロレックスのエクスプローラー、
白シャツにブルージーンズです。
バーキンはとても古いのものを修理をして大切に使い、
ロレックスも生産されて何十年も経ったものですが、
彼女にとてもよく馴染んでいました。
彼女は、新しいバーキンやロレックスには全く興味がないそうで、
古くて良いものを愛することが
フランスの文化なのだというニュアンスの話をしてくれます。
私の母も子供の頃から同じような話をしてくれました。
「安物買いの銭失いはしないように、
多少高くてもなるべく良い物を買いなさい」
といつも教えてくれました。
良い物とは、時が経っても変わらず美しく、
時代を超えるものだと思います。
しかし、名品、良い物は非常に限定されたものなので、
人と被る可能性があります。
母は、
「上品なファッションとは人と違うことではなく、
目立たなくても目立ってしまうこと」
と常々言っていましたし、
「地味派手」と表現することもありました。
前述のフランス人女性に初めて会った時、
持っているものは新品ではなかったので、
キラキラしているわけでも、目立つこともないのですが、
その人から醸し出される強烈なオーラに圧倒されました。
まさに、「地味派手」でした。
名品を何十年にも渡って愛用し、自分に馴染ませ、
綺麗に手入れをされたシャツに、洗いざらしのジーンズ、
なんてことないのですが、
それが目立ってしまうことがファッションなのだと
強烈にインプットされた瞬間でした。
ファッションは
人と違うことを楽しむものでも、目立つことではなく、
人と同じような普通の服なのに
目立ってしまうことが大切なのです。
バッグや時計だけではなく、
シャツやジーンズは上質な天然素材で
体に合ったサイズを選ぶこと、
汚れのケアや手入れをしっかり行うことが重要です。
上質な服や小物を体に馴染ませることこそが
上品なファッションの基本なのだと思います。
貞末 哲兵
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