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シャーロック・ホームズ柄のネクタイ

ローカルコラボ「DAVID EVANS for Maker’s Shirt鎌倉 & BAM鎌倉」をストーリー形式でお届けします。

2024.04.10 ブログ


皆様、いつも鎌倉シャツをご愛顧いただきありがとうございます。
新緑の美しい季節を迎えておりますがいかがお過ごしでしょうか。

ここ鎌倉は、紫陽花で賑わうまでの束の間休息といった感じですが、美しいグリーンに彩られた爽やかな街並みとなっています。


さて、今月は地元である鎌倉・ローカルのコラボレーションとなったネクタイ
「DAVID EVANS for Maker’s Shirt鎌倉 & BAM鎌倉」を、ストーリー形式でお話しさせていただきたいと思います。


今回のコラボレーションは、鎌倉・若宮大路という素晴らしいロケーションに、2022年の秋に出来たばかりの英国アンティーク博物館「BAM鎌倉」さんからの発案で始まりました。

BAM鎌倉さんの建築はあの隈研吾さんが手掛けられ、鎌倉彫からもインスピレーションを受けたとされるその美しさから、早くも鎌倉のシンボルに成りつつあります。


BAM鎌倉さんのオーナー兼 館長は土橋正臣さんで、彼の英国に対する強い思い入れと熱意が、そのまま建築物や集められたアンティークに込められています。
建物は1階から4階の構成になっており、詳しくはここではお話ししませんが(是非ご訪問なさってみてください)、3階にはロンドンの「シャーロック・ホームズ博物館」から強い影響を受けた“ホームズの部屋”を再現してあり、部屋の中には、100年以上前の生活で実際に使われていた英国アンティークが配置された素晴らしい作りになっています。

そして今回、土橋さんからのアイディアで「シャーロック・ホームズ柄のネクタイ」を作ることになったのです!


BAM鎌倉さんが『シャーロック・ホームズ』の初版本から取ったモチーフをお持ちであることも手伝って、今回の話はとんとん拍子に決まりましたが、シャーロック・ホームズ柄の「ネクタイを作る」にあたっては、鎌倉シャツならどこでどのように作るかが大切になってきます。

通常、鎌倉シャツがモチーフ・ネクタイを作る場合において、その方法は10通り以上ありますが、今回はその中でも最も難しい方法をチョイスしました。

イメージすることはただ一つ、「世界一のシャーロック・ホームズのネクタイを作ること」に他なりません。物作りにおいては、出来る範囲で最も難しい方法がいつも最良なのだと思います。

それでは、「DAVID EVANS for Maker’s Shirt鎌倉 & BAM鎌倉」のストーリーの始まりです。


——あれは、今でも忘れはしない。

2011年の3月11日、私はロンドンにいた。

今でも実質世界の中心と言われている「メイフェア」、グリーンパークのホテルで、朝食を取りながら音声の出ていないBBCニュースをぼんやりと見ていた。
東日本大地震が起こり、ニュースだけでなく、日本からもたくさんの連絡が届いたのだ。日本は大変なことになっているようだが、今のところ身内に被害は出ていないようだった。

ロンドンにいたため、地震の全容は全く把握出来ずにいたが、これから大事な商談があるので向かうしかない。しかも、今日の商談は英国で300年の歴史を誇るシルク・織物ファクトリーであるVANNERS社(DAVID EVANS社は子会社・プリント部門)を初訪問することになっているのだ。
うまくいけば、日本の小売店では初めての直接取引が可能になるかもしれない。

VANNERS社へのアタックは、鎌倉シャツの長年の目標であり、夢だった。
それがいよいよ実現しようとしているのだ。

当時、創業者の貞末タミコとロンドンに来ていた私はVANNERS社に向かい、彼女は市場調査に行ったのだった。
私は、ヨーロッパで初めて訪れるファクトリーには必ず一人で行くことにしていた。
もちろん、数名で行けば楽になるし、仕事もスムーズになる場合もあるのだが「東の果ての日出ずる国からウエスト・エンドまで一人で商談にやって来た」というストーリーを引っ提げたかった。
先方はそんなこと(私のストーリー)は全く気にしていないと思うが、甘えを捨て、自らを鼓舞するために一人で行くことにしていた。

一人で知らないヨーロッパの地で新しい取引先に行くのは怖いが、行ってしまえば、先方から「よく1人で来たね」という感じで歓迎してもらえたことが多々あった。
また、日本人はほぼ100%グループで行動するのに対し、「日本人のバイヤーの多くは私達(ヨーロッパの人)が分からない言語を多く喋り、ヘラヘラしている場合もあるのに、君は違うね」と言われたことも少なからずあり、やはり一人で行くのが正しいと思うようになった。

今でこそ余裕を持ってどこにでも商談に行けるようになりつつあり、おまけに今こうして一人で行く大切さも説いているのだが、当時33歳の私はまだ経験も足りず、初商談では極度の緊張に襲われていたことを思い出す。

当時の社長だったDAVID TOOTHさんが穏やかな笑顔で迎えてくれ、私は緊張しながらも鎌倉シャツという会社の説明をし、なんとか商談に持ち込むことが出来たのだった。ただ、最初は東の果てからやってきた謎の日本人だったこともあり(信用がない)、シルク・プリント生地は買わせてもらえず、シルク・織物のみの発注となったが、ファースト・デリバリーからその素晴らしいクオリティーに感動したのを今でも覚えている。

そして、それから毎シーズンにわたってロンドン郊外のVANNERS社を足繁く訪れ、信用を積み重ねること二年後(だったと思う)、ついに英国シルク・プリントの代名詞であるDAVID EVANS社の生地を発注することが出来たのである。

そのシルク生地は凄まじいまでの美しいドレープと、ハンドプリントならではの深い味わいを併せ持った究極のものだった。
プリント生地自体は他でも作ることは出来るのだが、DAVID EVANS製のドレープと味わいは唯一無二のもので、世界中ここでしか作ることの出来ない絶対的なクオリティーなのである。

それから、十年以上にわたって鎌倉シャツは無地においては世界一(と言われている)の発注量を誇り、良好な関係を築いている。
しかし、このコロナ禍においてシルク・織物を主としたファクトリーであるVANNERS社は300年にも及ぶその歴史に幕を下ろすことになってしまった。

幸いにも、プリント・ファクトリーであるDAVID EVANS社はスプリットして継続することが出来たのだが、いつまで続くは分からない。


小売業やアパレルは、その産業を支えているファクトリーのあり方や、永続する方法を真剣に考えなくてはならないと思う。

鎌倉シャツの創業者達は「ファクトリーの存続を願い、小売価格をなるべく買いやすいものにし、自らリスクを追って国内外の工場と付き合う」哲学を持っていた。
一方、「アパレル小売業の多くはリスクをヘッジし、高めに設定した上代からセールをしても儲かる、しかしそれではファクトリーへの発注数量は増えない」のである。

昨今、声高に叫ばれているSDGsの中に、工場自体の永続性を語る人はほとんどいない。工場がなくては、アパレル産業におけるSDGsのメインテーマである(になってしまっている)環境問題など そもそも存在すらしないのだ。

前述した、十年以上にわたり鎌倉シャツが世界一の発注数量を続けることが出来ている理由は「お客様に納得していただける価格を実現し、リスクヘッジをしない(セールをしない)確固たる決意」の基に行われていることに他ならない。
しかし、これを行うのはアパレルの基本的な構造上(セールに逃げるリスクヘッジと高めの上代設定)、簡単なことではない。

DAVID EVANS社は生き延びて欲しいと願うまでだが、今回のコラボレーション企画は、この世界一のシルク・プリントのファクトリーに、柄から起こし、カラーも細かい微修正をし続け、唯一無二の本物(英国のファクトリー×・ホームズ×MADE IN JAPAN)にこだわった「シャーロック・ホームズのモチーフ・ネクタイ」である。

この企画が、顧客の皆様に喜んでいただけるものになることを心から願うとともに、この工場が永続する一助となれば幸いである。——


正真正銘のイングリッシュ・ツイルにハンドプリントされたシャーロック・ホームズのネクタイは、美しいドレープと落ち感を持ち、とても深い味わいを持っています。

鎌倉シャツとBAM鎌倉さんだけの限定販売となり、世界中ほかで買うことは出来ません。

シャーロック・ホームズファンの方以外でも、普段にもお使いいただけるシンプルな柄のネクタイとなっております。
是非、この機会にお求めいただければ幸いです。

今回も最後までご覧くださり、ありがとうございました。
また、次回もこのブログでお会いすることを心より楽しみにしています。

※ シャーロック・ホームズ柄のネクタイは、「鎌倉シャツ オンラインショップ」・「鎌倉シャツ 鎌倉本店」・「BAM鎌倉 ミュージアムショップ」にて、6/5(月)より販売中。 各 ¥9,790(税込)

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