松下幸之助を考える Vol.2
「道に迷っていた」私は『道をひらく』というタイトルに惹かれ、この本を手にしたのを覚えている。
最近、大変ありがたいことに色々な方からブログの感想をいただくことが多くなってきた。
主にこのような感想が多い。
「よくいつもこんなに文章を書けますね、とてもじゃないけど僕には出来ないなぁ」
「たくさんのブログの他に、Facebookや、MONTHLY KAMAKURAも執筆して、いつやっているんですか?」
文章は書けば書けるようになるだけで、書かなければ書けるようにはならない。
プロの作家として食べているわけでもないし(もちろんそのレベルに達していない)、とにかく書くことが楽しいだけである。
楽しいことは継続する → 必然的に経験値は増える → 感想をもらい良い気になる → また書く → 最初に戻る
という無限ループに入ればほぼ全ての物事は上達するのではないだろうか。
フェデラーやナダル、ジョコビッチなんかは修行僧のような顔つきをして、哲学を語る雰囲気はあるものの、基本的にはテニスを楽しんでいると思うし、大谷さんも同様で、野球が好きすぎて外出もしないで寝ることに時間を使うのである。
現場のリアルな仕事をしなくなった(たまにしてしまうが、本来してはいけない)私にとって「書くこと」は重要な仕事で、同時に情報のインプットがなければ発信することは出来ない。
いつ書いているかと言うと、早朝のカフェか、夜ご飯を食べた後はかなり時間がある(最近全く出歩かないし、酒も飲まない)ので、虎屋の羊羹と一保堂のお茶を楽しみながら、いくつかの本を読み、文章を書くのが日課となっている。
この文章は京都へ向かう新幹線の中で書いているのだが、先ほど名古屋を通過した。
私の体感では乗ってから20分ほどだが、実際には1時間20分経っている。
夜ほとんど出歩かず、酒も飲まず、あまり食べなくなったので、人から見たら仙人のような生活らしく、鎌倉界隈では、「貞末哲兵はそのうち出家するのではないか」という噂もあるそうで、誠に光栄であるが今はまだ考えていない。
さて、前回に引き続き、松下幸之助の『道をひらく』から抜粋しながら、自分の体験や感想を重ねてお話してみたいと思う。
『道をひらく』を出版しているPHP研究所はパナソニックの創業者である松下幸之助が創設したもので、京都市南区にあるそうだ。PHP研究所は、京都の臨済宗・南禅寺の近くにあり、当時の館長であった柴山全慶氏が松下氏に約10回に渡り仏教の講義をした(松下幸之助.com)とある。
南禅寺は京都五山の別格に列せられ、石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」でも知られている有名な禅宗の大本山である。
実は今回の出張では念願叶い、現在の南禅寺・館長である田中老師と初めてお会いする事になっている。
私は作務衣を通して、鎌倉や京都の住職や僧侶の方に会う機会が増え、必然的に「禅」というものに興味を持ち独学で勉強している。
そして、『道をひらく』であるが、その内容は禅の考え方に極めて近く、松下氏が仏教に大きく影響を受けたことが確認出来る内容であることに最近気付いた。
禅の基本的な考え方は「ゲインではなく、ルーズ」だそうだが、己を無にすることが一つの到達点である。
そして、己を無にするだけでもなく、そこからまた到達しなければならない世界があるのだが、人間社会である以上、己を消すのはことのほか難しい。
己は自戒も含めて、いつも、誰にでも登場し、「自分の仕事だ!」「俺が、私がやったんだ!」と思いたいのは誠に人情だと思うが、『道をひらく』はそれについてもきちんと、そして厳しく言及してあった。
「どんな仕事でも、それが世の中に必要なればこそ成り立つので
世の中の人々が求めているのでなければ
その仕事は成り立つものではない。
人々が街で手軽に靴を磨きたいと思えばこそ
靴磨きの商売も成り立つので
さもなければ靴磨きの仕事は生まれもしないであろう。
だから、自分の仕事は
自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで
ほんとうは世の中にやらしてもらっている
世の中の仕事なのである。
ここに仕事の意義がある。
自分の仕事をああしたい、こうもしたいと思うのは
その人に熱意があればこそで、まことに結構なことだが
自分の仕事は世の中の仕事であるということを忘れたら
それはとらわれた野心となり、小さな自己満足となる。
仕事が伸びるか伸びないかは、世の中がきめてくれる。
世の中の求めのままに
自然に自分の仕事を伸ばしてゆけばよい。
大切なことは
世の中にやらしてもらっているこの仕事を
誠実に謙虚に
そして熱心にやることである。
世の中の求めに、精いっぱいこたえることである。
おたがいに、自分の仕事の意義を忘れたくないものである。」
(『道をひらく』より抜粋)
最も大切と思われるのは下記部分と思われる。
「だから、自分の仕事は
自分がやっている自分の仕事だと思うのはとんでもないことで
ほんとうは世の中にやらしてもらっている
世の中の仕事なのである。
ここに仕事の意義がある。」
「ここに仕事の意義がある」というのが、松下氏が厳しいながらにも我々を励ましてくれている雰囲気を感じることが出来る。
自分の仕事があるのはお客様のおかげであり、お客様がいなくては、そもそも仕事は生まれない。
そして、その仕事をするための全ての活動費はお客様からいただいた利益によって会社から出されたものである。
そう考えれば何にもとらわれず、固執せず、ただ単純に熱心に仕事に取り組めば良いのではないのだろうか。
(つづく)
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